『トゲ』
小学生の頃、学校帰りに駄菓子屋へ寄った
いつもは寄らない店だったけれど
雨が降っていたので雨宿り代わりに寄った
何も買わないわけにはいかないので
10円の駄菓子を3つほど買ったのだが
店主のばあさんの言葉が今も忘れられない
「たった30円か」
少年だった私の心に刺さったトゲ
トゲはいつの間にか抜けてしまった
でも、ふとした拍子に傷口はうずき
チクリ、チクリとトゲを忘れさせない
10年経っても、20年経っても
言い放ったばあさんが死んだとしても
2015年7月15日作 2015年7月26日ラジオNIKKEI「私の書いたポエム」放送分
【あとがき】 駄菓子屋も20、30年前にはけっこうあったのですが、 私の近所に今もあるのは一軒だけでしょうか。 今思うと「たった30円か」なんて言うなら 駄菓子屋なんてやるなよと思ってしまうのですが、 そのときに受けた言葉はどうしても忘れられません。 人を傷つける言葉なんてのは簡単ですが 人を癒す言葉は難しい(ないわけではないけれど)
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