『細胞City』
こんなにも人が行き交う交差点で
多くのものが見えているのに
たった一つも視ていないんだ
たとえば君がハチの巣を見ているとして
ハチの一匹一匹の顔を覚えているかい?
この街は何千万もの細胞で形成される
この僕も街を成す細胞の一つだけれど
今にも細胞壁や細胞膜ははがされそう
自我は拡散し、あとに残るはもぬけの殻
街によって僕は稀釈されているようだ
視えない、聴こえない、届かない、わからない
求めれば求めるほどに、何もないって気づくんだ
だけど、足るを知らない僕は何かを求めつづける
世の中は因果応報、Give&Takeってなもんで
求められたいならば、何かを求めてみればいい
僕はこの街に不可欠な細胞ではないだろう
でも、誰かにとっての不可欠な細胞にはなり得る
核である僕が自分の細胞膜へそっと手を伸ばすと
かすかな温もりとわずかな脈動が感じられた
隣にいる誰かも同じ気持ちでいるのだろうか?
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