『無駄という名の余裕』
今時、給料袋を受け取る人はほとんどいない
ATMの画面を見れば、数字が増えている
今時、原稿用紙に手書きをする人はあまりいない
キーボードで打ち込んだほうがずっと早い
今時、本やCDを店頭で買うのは損をしている
ネット通販で買うほうが手軽かつ安価である
今時、有人の馬券売り場なんてほとんどない
それどころかネットで馬券が買える時代なんだ
今時……
今時……
今時……
今時……
デジタル化されたほうが手軽に利用できる
人件費を抑えられるから経済的である
紙を使わなければ環境にも優しいのかもしれない
それでも、機械相手では満たされないものがある
ATMの数字を眺めるより給料袋のほうがありがたい
ヘタだとしても手書きの文字には温もりが感じられる
本屋やCD店で物色しながら品定めをするのは楽しい
ネットで馬券購入するよりも、競馬場に行きたいんだよ
合理的、客観的、経済的……なんて甘い響き
けれども、それと善悪や好悪はまったくの無関係
無駄を無駄と思うから無駄なのであって
見方を変えればそれは余裕にもなりうる
僕は僕を無駄だと思った日々があった
君も君を無駄だと思う日々があるだろう?
でも、違う見方の人がどこかにいるんだよ
それが非合理的で、主観的で、非経済的なホモサピエンス
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【あとがき】 無駄を悪だと思いがちですが、そんなことはありません。 ときに無駄は余裕であったり、潤滑剤であったりします。 俺からすれば、朝の情報番組の占いコーナーなんて 無根拠に人を惑わす無駄なものに映るのですが、 それで幸せになれる人がいることもまた事実。 それは単なるプラシーボ効果に過ぎないとしても。
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