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作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第82回   『相対と絶対』
『相対と絶対』

一歩進んでは引き返し

一歩進んでは引き返す

モタモタしている僕は

あとからスタートした君に追い抜かれる

別に競走しているわけじゃない

でも、どうしようもなく焦るんだ

君の姿が僕の視界から消えていく



僕は君には追いつけないかもしれない

伸ばした腕がひゅうと空しく空を切る

でも、あがきもがくことはやめない



一歩進んでは振りかえり

一歩進んでは振りかえる

ガタガタと振るえる僕は

後ろから迫る足音に脅えていた

別に競走しているわけじゃない

でも、周りと比べてしまうんだ

見えない音が僕を追い抜いていく



僕は君には追いつけないかもしれない

でも、孤独な夢をもぎとるために

僕は絶対にリタイアはしないよ



一歩進んでは立ち止まり

一歩進んでは立ち止まる

カメのようにノロい歩みだ

見通せるセパレート・コースの

前にも後ろにも誰もいやしない

わずかに並走した君の声援だけが

未だに僕の耳のなかでこだましている



僕は君には追いつけないかもしれない

でも、僕は「僕」に追いつける、追い越せるさ

それでもう充分だと僕には感じられた

ゴールテープを切るときはどうか笑顔で

そんな想いが今の僕を突き動かしている


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