『禁忌の青梅』
住宅街の片隅に梅の木が立っていた
木の下には青い梅の実が落ちている
梅酒にするにはちょうどいいや
なんて僕が拾い始めたところで
脇からガミガミと叫ぶ声がする
「これはワシの梅の木だ!勝手に実を取ってはいかん!
それに青梅に手をつけてはいけないのは知ってるだろう?」
そう、この国では未成熟な果実に手をつけてはいけないのだ
梅酒にするには青梅じゃないといけないし
青く成りたての果実が一番旬だと思うのだが
禁忌とされるから、余計に青梅を拾いたいと思う
そして、禁忌を破るものがありふれると更なる禁忌で縛る
僕は単純においしい梅酒を作ってのみたいが、
禁忌を破ることそのものに悦楽を見出している人もいるようだ
縛りたがるお上と脱法者、SとSとのおいかけっこ
この世の中には禁忌が増えすぎた
禁忌とせざるを得ない行動や発言もあるけれど
もっと僕らは自由でいいんじゃないだろうか?
禁忌なんて時代や地域で変わるものがほとんどだ
そして、僕はこっそり拾った青梅を角砂糖とホワイトリカーとともに
ビンに詰め込んで、来年の成熟を密に心待ちにしている
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