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作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第71回   『禁忌の青梅』
『禁忌の青梅』

住宅街の片隅に梅の木が立っていた

木の下には青い梅の実が落ちている

梅酒にするにはちょうどいいや

なんて僕が拾い始めたところで

脇からガミガミと叫ぶ声がする



「これはワシの梅の木だ!勝手に実を取ってはいかん!

それに青梅に手をつけてはいけないのは知ってるだろう?」

そう、この国では未成熟な果実に手をつけてはいけないのだ

梅酒にするには青梅じゃないといけないし

青く成りたての果実が一番旬だと思うのだが



禁忌とされるから、余計に青梅を拾いたいと思う

そして、禁忌を破るものがありふれると更なる禁忌で縛る

僕は単純においしい梅酒を作ってのみたいが、

禁忌を破ることそのものに悦楽を見出している人もいるようだ

縛りたがるお上と脱法者、SとSとのおいかけっこ



この世の中には禁忌が増えすぎた

禁忌とせざるを得ない行動や発言もあるけれど

もっと僕らは自由でいいんじゃないだろうか?

禁忌なんて時代や地域で変わるものがほとんどだ

そして、僕はこっそり拾った青梅を角砂糖とホワイトリカーとともに

ビンに詰め込んで、来年の成熟を密に心待ちにしている


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