20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第68回   『需要と供給』
『需要と供給』

求められても応えられないことがある

そんなことはあたりまえだけれど

需要者側は必死ですがりつく

そこでしか救われないかのように

ワラにもすがる想いを訴えてくる



でも、本当はそんなことはなくて

人は一人で生きていくだけの強さを持っている

なんて、キッパリ言えたらいいのだけれど

偽善者は中途半端に手を差し出して

そして、ドロ沼へと引きずり込まれる



だから、彼女は去り、僕は諦めた

引き留めるだけの力もなかったから

それから数年、彼女の立場が少しだけ分かった

前に視線を移して、彼女の幻影を見ながら

僕はヨタヨタをおぼつかない足取りで進む



その脇から僕の手を引くものがいる

僕は無駄に歳を食ったわけじゃない

この手を僕は支えきれないと分かった

でも、その手は確かに温かかったんだ

共倒れになるってわかっているのに



需要と供給なんて相対的なもので

こんな僕でも供給者になってしまうことがある

それでも、僕は僕を背負うだけでいっぱいいっぱい

僕は無情にも温かい手を振り払いながら

与えられるナニカを求めながら前進前進



その手をもつ誰かに恨まれてもしかたない

それに八方美人になんて意味がないから

いつか僕が供給者たる立場に至れたら

そのときは振り払ったはずの温かい手を握りかえそう

今はもう少し自分中心でイカせてください


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 47203