『暗順応』
小雪の舞う12月の渋谷駅前
すれ違う恋人達は幸せそうに腕を組みながら
クリスマスの過ごし方を語り合っているのかな?
スクランブル交差点を器用に縫って歩けるようになった
でも、僕の人生は粗だらけで上手く縫えそうにはないよ
僕を待つのは冷たく暗い六畳間の独房
乗車率200%の田園都市線から開放されても
僕の心には冷たい空っ風が通り抜けていく
そして僕の手足には重りがついているみたい
駅から家路までの300mが3000mに感じられた
ポケットからカギを取り出し、暗い六畳間へと入る
誰もいるわけがないのに、誰かいるような気がする
自分の居場所のはずなのに、ちっとも落ち着かない
蛍光灯のヒモをまさぐったけれども、僕の手は空を切る
もういいや……冷たく湿ったせんべい布団に転がった
夢や希望、理想をスポーツバッグに詰め込んで
田舎から東京へとやってきたはずだったのに
僕はそれらをどこかに落としてしまったらしい
星の数ほど人がいるから、僕は孤独になる
僕はいったい何のためにここにいるのだろう?
せんべい布団の中で目を閉じる
二度と目を開けられなくてもいいかな
そんな風に思うことなんてしょっちゅうだ
暗闇に慣れた僕は蛍光灯のヒモヘ手を伸ばす
今度はヒモをつかみ、暗い部屋に灯りをともした
太陽や満月には手が届かなくても
蛍光灯のヒモには何とか手が届くんだ
か細い灯りの下で、僕は鈍磨した心の中をまさぐる
夢や希望、理想のカケラが残っていないだろうか
心の中は部屋よりも暗くて、よく見えなかった
暗い心の中でも見つづけていれば目が慣れてきて
無くしたと思っていたものをきっと見つけられる
根拠などないけれど、そう思わずにはいられなかった
明日はもっとよく見えると祈りながら、静かに目を閉じた
*********************************
『みたいに』
あの人みたいに書けたらいいな
なんて思うことがよくあるんです
でも、実際に書き出してみると
それはやっぱりあたしの言葉で
あの人みたいじゃ全然なくて
ちょっぴり寂しかったりします
そんなあたしの言葉も知らない誰かに
あの人みたいに書いてみたい
そんな風に思ってもらえているのかな
もしそうだとすれば最高にうれしいです
あたしはあたし
あの人はあの人
誰かは誰か
みんながみんなの言葉を持ってる
みんながみんなの言葉を待ってる
|
|