『メガネマン』
寒空の下で僕は車を走らせる
何のアテもなく、目的地もない
ガソリンも底をつきそうだった
車を止めようと駐車場を探したけれど
それがなかなか見つからなかった
見かけるのは「馬主車場」ばっかり
なんてセレブな世の中なんだろうと
わけのわからない敗北感を感じながら
よくよく見てみればそれは「駐車場」だった
メガネのレンズがくもっているのか
ココロのレンズがくもっているのか
たぶんその両方だろう
こんな視界がくもった状態じゃ
安心してドライブができやしない
ナビなんてしゃれたもんはないので
地図を見ながら、目をこすりながら
メガネ店に向かって僕は車を走らせる
メガネ店の店員に事情を話すと
店員は奥からレンズクリーナーを持ってきた
決して安くはなかったが、僕はそれを買った
そんなレンズクリーナーだったが
あるとないとでは大違いだった
眼球がメガネを突き破るほど驚いた
「辛ラーメン」が「幸ラーメン」に見える
「変心」が「恋心」に見えてしまうんだ
すごいな、このレンズクリーナー
これでしばらくは安心してハンドルを握れそう
今度はお金を貯めてナビを手に入れようか
うっすらと目的地が見えたような気がした
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