『煮えた血液−Emotion flows into your cup−』
外側から流れ込んでくる怒りが
彼の内側から湧き上がる憤りが
目の前のコップの中を満たしていく
朱く朱く、それはまるで煮えた血液
ああ、ああ、もうあふれそうだ!
あふれ出した怒りは罵声へと変わり
隣にいる人、周りにいる人のみならず
顔も見えないネット上の誰かにさえ向かう
その誰かのコップにも煮えた血液が注がれる
怒りの連鎖が綿々と引き継がれていくのだ
次は彼女に怒りが向けられるのかもしれない
そんな彼女は怒りがあふれていかないように
コップの底に穴を空けようとしていた
あらかじめコップを冷蔵庫に入れて冷たくしていた
涙ぐましい努力だが、それでは対症療法にしかならない
怒りのコップの中に「愛情」を入れておけばどうだろう?
本来は指定のコップに指定の感情を入れるべきなのだが、
怒りや悲しみばかりが多い世の中ならば臨機応変に行くしかない
愛情と怒りが混ざれば、「安堵」あたりが生まれはしないだろうか?
少なくとも怒りではなく、別の想いに変わるはずである
いざというときに中身をこぼして粗相をしてしまわないように
日ごろから怒りの大きな容器を用意しておきたいものである
コップでは小さすぎる、もっと大きなバケツでも用意しよう
愛情の容器は……コップのままでいい
ささいな愛で満たされて、どこかへあふれていく
それはすばらしいことと思わないかい?
【初出】小説&まんが投稿屋『ねぶの詩集1』/2008年08月27日(Wed)
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