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作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第42回   『煮えた血液−Emotion flows into your cup−』
『煮えた血液−Emotion flows into your cup−』

外側から流れ込んでくる怒りが

彼の内側から湧き上がる憤りが

目の前のコップの中を満たしていく

朱く朱く、それはまるで煮えた血液

ああ、ああ、もうあふれそうだ!



あふれ出した怒りは罵声へと変わり

隣にいる人、周りにいる人のみならず

顔も見えないネット上の誰かにさえ向かう

その誰かのコップにも煮えた血液が注がれる

怒りの連鎖が綿々と引き継がれていくのだ



次は彼女に怒りが向けられるのかもしれない

そんな彼女は怒りがあふれていかないように

コップの底に穴を空けようとしていた

あらかじめコップを冷蔵庫に入れて冷たくしていた

涙ぐましい努力だが、それでは対症療法にしかならない



怒りのコップの中に「愛情」を入れておけばどうだろう?

本来は指定のコップに指定の感情を入れるべきなのだが、

怒りや悲しみばかりが多い世の中ならば臨機応変に行くしかない

愛情と怒りが混ざれば、「安堵」あたりが生まれはしないだろうか?

少なくとも怒りではなく、別の想いに変わるはずである



いざというときに中身をこぼして粗相をしてしまわないように

日ごろから怒りの大きな容器を用意しておきたいものである

コップでは小さすぎる、もっと大きなバケツでも用意しよう

愛情の容器は……コップのままでいい

ささいな愛で満たされて、どこかへあふれていく

それはすばらしいことと思わないかい?



【初出】小説&まんが投稿屋『ねぶの詩集1』/2008年08月27日(Wed)


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