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作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第23回   『満月をつかみそこねた男』
『満月をつかみ損ねた男』

猛吹雪の夜の下

僕は一人歩いていた

吹雪が酷くてうつむいていた



しばらく歩いていたら雪がやんだ

見上げてみればキレイな満月

あんまりキレイなもんだから手を振ってみた

そうしたら満月は微笑んでくれた

そんな気がした



日に日に満月との距離は縮んでいた

そう思った僕は満月へと手を伸ばした

届きそうだったのにかすめただけで

満月は雲の陰へと消えていった

あたりは宵闇に包まれていった



翌日もその翌日も僕は夜空を見上げた

雲の切れ間から星は見えるのに

あのキレイな満月はもう見えなかった



それでも、満月なき夜空に僕は手を掲げる

満月が見えればいい

でも、見えなくたっていいさ



掲げた僕の手はきっと何かをつかめる

この手を下ろさない限りは

ホラ、今だって何かが僕の手の甲をかすめた


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