『フタ』
器に満ちた愛情はいつしかからっぽになる
たとえば、故意に器を倒すようなことがなくても
きっと愛情は冷えると気化し、沸騰すると凝固するのだろう
冷えそうな愛情ならば、フタをすれば良かったのかもしれない
だけど、僕にはフタを作る技術も、買うお金もなかったんだ
自分のふがいなさ、甲斐性のなさに唇を噛み締めてしまう
とりあえず今は、フタつきの保温容器を買おう
僕が未だ知りえぬ愛情を守れるように
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『僕を連れて』
弱い僕だと開き直りたかった
誰かに連れていってほしかった
でも、それじゃ僕は僕じゃない
誰かの中の一部でしかない
連れていこう
僕自身の力で
放ってはおけないから
弱い僕を連れていくのは
まだ少し重荷だけれど
そのうち慣れるだろう
それが他の誰でもない僕の責任
一人じゃない
そう鏡に向かって言い聞かせてみる
僕の瞳に映るのは、昨日と違う今日の僕
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