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作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第150回   『過積載』
『過積載』 2012-02-08 Wed 22:24

あんまり長く心の片隅に置いておいたから

あれもこれも捨てるに捨てられなかったんだ

いつか使うんじゃないかってさあ

そんなものが溜まりに溜まって

いつしか心のトランクはいっぱいいっぱい

トランクどころか後部座席にまであふれていた



大したエンジンなんて積んじゃいないのに

余計なものを積み込み過ぎたから出足も悪くて

後ろの誰かにクラクションを鳴らされたりもする

加速したい想いとは裏腹に、遂にはエンスト

うんともすんとも言わない悲しい脚周り

ハザードランプを点けてもどうにもならない世の中



いつか使うと思ったものもいつまでも使わない

本当はずっと前からそんなことをわかっていた

わかっていたのに気づかないフリをして

ショボいエンジンをレッドゾーンまでぶん回していた

そりゃあガソリンメーターだってEを指すはずさ

過積載なんて燃費の悪い人生に決まってるだろ?



ああ、もう動かない

ああ、もう動けない

でも、動くしかない



あれもこれも捨てるしかないけれど

よく見れば腐ってるじゃねえか、これ

3年前はピッカピカだったのになあ

こびりついて剥ぎ取れねえよ、これ

力づくで無理やりにはがし取ったら

トランクの底板の一部も取れてしまった



想定外に道の半ばで始めた大処分

足周りが動き出すまで軽く軽く、心を軽く

想い出はすがるためのものじゃない

今の僕らにはお荷物、足かせに過ぎない

せめてそうだと思い込ませて欲しいんだ


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