20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第140回   『オリの中にて』
2011-09-17 Sat 21:26

『オリの中にて』

囲われたオリの中にいろんな動物がいる

犬や猫、うさぎにネズミ、ゾウやライオンまで

オリがなければネズミも逃げられるかもしれない

だけど、オリの中じゃあ生きるも死ぬもネコ次第

「窮鼠、ネコをかむ」なんて虚しい絵空事なんだよ

だから、ネズミやうさぎは捕食者に媚びるしかない

いつかオリの中から脱出できる日を夢見ながら



たとえ食べられることがなかったとしても

ライオンやゾウだってラクじゃないんだ

ただでさえ広くもないオリなのに

こんなにいろんな動物がいたんじゃ狭苦しい

オリの中で威張っていたって哀れなピエロ

外から聞こえる声はそんなピエロを嘲う声なのか

募るのは目の前の鉄格子を壊せない無力感



オリの中ならエサには困らない

世話係が毎日同じエサを運んでくる

でも、エサを食べるために生きているんじゃない

何のための脚で、何のための爪なのか?

食べるためなら口だけあれば十分だろう

そうじゃない、そうじゃないって知ってるはず

知っているのに皆知らない振りをしてるだけ



すし詰め状態のオリの中だから

新たな動物が搬入されてきたら

順番にオリの外へと解放される

とてもつらいはずのオリなのに

オリを出る際、名残惜しんで涙するネズミがいた

一方では振り向きもしないで

振り払うようにひたすら遠くへ駆け出す犬もいた



ああ、ゾウやライオンにはオリであっても

うさぎやネズミにとっては城だったのか?

ほかの動物の考えなんて知りようもない

知る必要もないけれど気にはなるだろう

束縛された安定と不安定な自由

その善悪なんかは各々が決めればいい

ただ、僕なら選択権が欲しいと希うんだ


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 47064