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作品名:ねぶの詩集3 作者:ねぶ

第138回   『個人リレー』
2011-08-15 Mon 00:43

『個人リレー』

誰もが生まれながらに用意された専用レーン

そして、生まれながらに握っているバトン

そのスタート地点は人それぞれ違っていて

僕のはるか前からスタートしてる人

ずっと後ろからスタートしてる人もいる

それがズルいと思ったこともあるけれど

別に彼らと競走しているわけじゃないんだ



たまに並走することもあって、そんなときは嬉しくなる

お互いの手を取り合って走ってみたりもできるんだ

それは互いの疲れを癒す休憩区間なのかもしれない

ずっと並んで走っていたいと願わずにはいられない

でも、方向がスピードが徐々にずれて、やがては離ればなれ



それでも僕らは前へと駆け出すよ

否応なしにゴールへ押し出す力があるから

それは抗えない時間の流れだけじゃない

昨日の僕が泣きながらバトンを渡してくれたから

明日の僕が笑顔でバトンが届くのを待っているから

そんな顔を見たら前に駆け出さないわけにはいかないだろう?



誰かのために走る区間もあるかもしれないけれど

あくまでも自分による、自分のためのレースなんだ

昨日の自分よりも少しでも加速できたなら

明日の自分も加速を続けられたなら

思いもよらずどこかのレーンの誰かの励みになりうる

それは僕らも別のレーンの誰かに励まされているから



いつかどこかでそんな誰ものゴールテープが切られる

それが望んだ地点だろうと夢見た場所への途上でも

そのとき、自分自身がバトンへと生まれ変わる

そのバトンが皆の握っている一つ一つのバトンなんだよ



僕から僕へ

僕から僕へ

僕から僕へ

僕から僕へ

僕から僕へ



僕から君へ


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