『イルカになりたい』
「うん、うん、あなたの気持ちがよくわかる」
その言葉で何もわかっていないことがわかる
出来合いの言葉は無邪気に胸をえぐりとる
既製品じゃなくて、いびつだってかまわない
噛み砕いて消化して、それを吐き出して
あなただけの言葉を伝えたらそれでいい
あなたの痛みはあなたの痛み
どうしても僕にその痛みが届くことはない
痛みがわかるだなんてたやすく言うなよ
他人のオナニーは鎮痛剤になんかならない
でも、分からないことを分かろうとしてくれる
その姿勢はきっと傷口を優しく包むだろう
「良薬は口に苦し」と言うじゃないか
甘い言葉じゃどんな痛みも癒せないけれども
冷たく苦いロジックを想像力のオブラートで包む
それは特効薬になれなくても頓服にはなりうる
言葉の限りを尽くしても1/3も届かないけれど
その1/3があなたを動かす触媒になればいい
どれだけの言葉で僕は人を傷つけてきただろう?
どれだけの言葉で僕は人に傷つけられてきただろう?
どれだけの言葉で僕は人を癒せただろうか?
どれだけの言葉で僕は人に癒されてきただろうか?
言葉は核兵器以上の破壊力で、どんな薬よりも効く
そんな僕は今、イルカになりたい
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