東京の西部をはしる多摩鉄道幸福駅の長いプラットフォームにオレ ンジ色をした10輌連結の郊外電車が滑り込んでくる。 かなり多くの乗降客に混じってグレーのハンティングを被り脚絆に 地下足袋を履いた半纏姿の植木職人石川流之介がプラットフォーム に降りたった。 石川流之介は素朴な蟹股でゆっくり高架式駅舎にのぼりつめて、 自動改札機に切符を放り込み、駅前通りに降りてゆく。 石川は駅前の柳並木の歩道をすすみ、駅前ビルにはいっていった。
石川はエレベーターで駅前ビルの8階にあがった。 エレベーターから降りた石川は廊下をぐるりと見まわした。いちばん 奥に菊野法律事務所という金文字いりのドアが見つかった。 石川はそのドアにアプローチしたが、ドアのまえで起ち竦んでしまう。 石川『ここが菊野先生の事務所だったか。菊野法律事務所という金文字 を目にしただけで、わしあ、ぎくりとした。ここは住む世界が異う人種の城 のようだ。日頃から現場で汗を流し土に塗れてる、わしのような職人風情 からすれば、なんとなく敷居が高い。けど、菊野先生に逢わなければ大事 なはなしは先へはすすまない』 石川は、おもいきって節くれだったごつい手をドアノブにかけた。 事務室に足を踏み入れた流之介は、ドアを閉めて振り向いた。 豪華なソファーの奥の壁に掛けられた『日捲りカレンダー』が黒く太い 文字で1999年5月21日金曜日になっている。その真上の天井に近い アイボリーの壁にはブルーの波板模様の縁取りをした壁時計が掛けられ ていた。壁時計の長針がぴくりとうごき午前11時になった。 鉢植えのリンドウの造花が載せられているカウンターのまえで石川が 起っていると、髪の長い女事務員が寄ってきた。 「いらっしゃいませ。そちらさまは」 黒く長い提げ髪の女事務員は石川に微笑みかけた。 「どんなご用件でしょうか」 「へえ。ちょっとばかり菊野先生に」 ハンティングを脱いだ石川は、禿げあがった頭をぺこりと提げる。 「わかりました。どうぞ、こちらへ」 「土足のままですが。ええですか」 「はい。そのままで結構です。こちらにおかけください」 豪華なソファーに浅くかけた流之介はじろりと周囲をみまわした。 応接セットの裏側には、漆で塗りあげられ、凝ったデサインのどっしり した衝立が配置されている。 その衝立の奥は事務コーナーになっていた。 「おひとつ、どうぞ」 長い提げ髪の女事務員が紅茶をさしだした。 女事務員の姿が衝立の奥に消えてから、石川は節くれだった右手で カップをもちあげ紅茶をすすった。 「お待たせしました。どうも」 菊野弁護士が衝立の奥からあらわれテーブルのうえに名刺をさしだした。 「弁護士の菊野です。きょうはまた」 菊野はソファーに身を鎮めた。 「どんなご用件でしょうか」 「へえ。あっしあ、植木職人の石川流之介ともうしあすだが」 石川は節くれだった陽焼けした手で名刺をおしいただいた。 「実あ、司法書士の白山咲一先生が警視庁に逮捕されたと聞きあした んであすが。新聞やテレビによると、5月13日の夜、なんでもそのぉ。 ど偉い先生をば殺害したちゅう嫌疑ばかけられてるとか」 「ええ。そうなんです。警視庁から東京地検に送致され、もう公訴を提起 されましたが」 「さよであすか。ええと、その」 石川は陽焼けした額に皺を寄せ、ぎょろりと菊野弁護士を見つめる。 「公訴の提起とかいうもんは、なんのこったべ」 「はい。白山君の場合、桜門大学お茶の水病院の松瀬病院長を殺害 した殺人犯として刑事裁判にかけられたということですが」 「とんでもねえ。白山先生あ、病院長を殺っちゃいねえだ。それこそ、 濡れ衣というもんで」 「まあ、おひとつどうぞ」 菊野弁護士はシガレットケースを開けて石川にタバコを勧めた。 「へえ。そいじゃ、一本頂戴えしあす」 石川は節くれだったごつい手でタバコを一本引き抜く。 「さきほどのおはなしですが。その」 菊野弁護士はライターで石川に点火のサービスをする。 「どうしてまた、そんなきっぱりしたことがいえるのですか」 「どうしてって、あの」 石川は、いかにも美味しそうに紫の煙を噴きあげた。 「事件があったという5月12日の夜にあ、あっしあ、白山先生を 招待しあして。そうですな。夜の7時ごろから10ごろまで、あっし あ、白山先生とずうっといっしょになって、飲み食いしていあした」 「なるほど。そうでしたか。それにしてもその夜、なんでまた白山 先生を招待なさったのですか」 「へえ。それが、あっしの山林を伐採して宅地に造成したときに、 売りだすめえに、できあがった造成地の地目変更の登記をしても らったんですが。白山先生に。もう3年もめえのはなしであすが。 そのお礼をしてなかったもんで、あの夜、馴染みの店に白山先生 を招待したというわけでして。へえ」 「なるほど。そうでしたか」 ソファーに身をのりだした菊野弁護士の目はきらりとひかった。 「そうすると、その夜、白山先生を招待した店はどこですか」 「へえ。梅林市の住江町にある『うな梅』ちゅう有名な鰻の老舗で ありあすだが」 「そうでしたか。その」 菊野弁護士はタバコの吸いさしを灰皿の縁に載せた。 「実は桜門大学お茶の水病院の松瀬病院長の死亡推定時刻は、 5月12日夜の午後8時から9時ごろとされているんですが」 「さよであすか。その時間にあ、白山先生あ、あっしといっしょに なって鯵の生き造りだの鰻の蒲焼などを肴にして、あの老舗 の『うな梅』で飲み食いしていあした。あの『うな梅』の女将に聞け ば、そのことあ、はっきりしあすだが」 「なるほど。よくわかりました。わしも白山君が松瀬教授を殺った とはおもっていませんが。なにしろ当の本人が、もっともらしい供述 をしているもんですから、小菅の拘置所に出向いて探りをいれて みましたけど、白山君は自分が殺ったの一点張りでして」 「さよであすか。白山先生にあ、なにかの考げえがあって、そういう 芝居をしてるんでしょうな。あっしにあ、そうとしかおもわれねえ だが。事件の当夜、梅林にいた人間がお茶の水くんだりまで出掛 けて人を殺すなんてこったあ、できねえ相談でごあすだ」 「仰るとおりです。石川さんのおかげで、どうやら白山君の事件 当夜におけるアリバイの証明ができそうです」 「それで、その」 流之介は陽焼けした額に皺を寄せぎょろりと菊野を見つめる。 「早速、白山先生を釈放してもれえあすか」 「いますぐというわけにはいきませんが。わしが念のため『うな梅』 の女将の証言を録音して、東京地検の聖橋事件を担当している 検事に掛け合ってみましょう」 「おねげえしあすだ。先生の費用のほうは、とりあえず、あっしが お払いしあすだ。どれぐれえでようござんすか」 「いえ。その必要はありません。白山君の弁護は、わしが引き受け ていますから。費用の心配は要りません」 「わかりあした。ひとつよろしくおねげえしあす」 「承知しました。お忙しいところ、わざわざ貴重なお知らせをいただ き、ありがとうございました」 菊野弁護士は軽く会釈する。 「そいじゃ。あっしあ、これから仕事がありあすんで。これでごめんこうむり あす。土足のまんまで失礼しあした」 菊野はソファーを離れた石川をドアのところまで見送った。
それは1999年5月21日の午後であった。 多摩鉄道梅林駅のプラットフォームにオレンジ色をした10輌 連結の郊外電車がごうごうと鉄路を軋らせながら滑り込んでくる。 多数の乗降客に混じりチョコレート色のおおきなカバンを提げた 菊野弁護士がプラットフォームに降りたった。 地下道を通り抜けた菊野弁護士は自動改札機に乗車券を放り 込み駅前通りにでた。 その駅前通りを左折した。 小高い丘のうえに建立された住吉神社は杉林でかこまれている。 住吉神社の参道に通じる道を右折する。そこが住江町だった。 菊野弁護士が小路にはいり、古風な街並みを見渡すと10メー トルほど先には、白い生地に黒く太い文字で『うな梅』と染めこまれ た暖簾が風に揺れていた。 梅林市の市街の大通りの雑踏から遮断され鎮まりかえった小路を すすむと、こつこつと自分の靴音が頭の芯に染みこむようであった。 菊野弁護士は『うな梅』の暖簾のまえに起った。 和式の自動式ガラス戸がするっと開いた。 菊野弁護士は暖簾を潜った。
地下鉄霞ヶ関駅の地下道からチョコレート色のおおきなカバンを 提げた菊野弁護士がマロニエの並木道にのぼってきた。 新緑の鮮やかなマロニエの並木道をすすむと、検察庁という太い 文字が横に刻み込まれた正門が浮かびあがる。その背後には白っ ぽい庁舎の高層ビルがそそりたっていた。
東京地検の五十嵐検事室では、壁に掛けられた大型の『日捲り カレンダー』が1999年5月24日月曜日をしめしている。 黒い縁取りをした円い壁時計の長針がぴくりとうごき午前10時に なった。 検事デスクに向かった五十嵐検事が書類を点検している。 そこへ菊野弁護士がはいってくる。 「あ、菊野先生」 自分のデスクで起ちあがった杉山検察事務官は菊野弁護士を 窓側のソファーに案内した。 「いま、検事を呼びますから」 菊野弁護士はソファーに身を鎮める。 ちらっとソファーの方向に視線をながした五十嵐検事は、杉山 検察事務官のサインを目線で受け止め、ぐるりと回転椅子のうえ で腰を浮かせた。 五十嵐検事がソファーに寄って来た。 「どうも。さきほどは」 検事はソファーに凭れる。 「お電話があった緊急の案件とはなんでしょうか」 「実はですね。先日、公訴を提起された白山被告人の件ですが。 その後の探索で、聖橋事件当日における被告人のアリバイが明瞭に なってきました。アリバイ証人がでてきたんでね」 「なんですって !」 五十嵐検事の顔面に動揺がはしり、検事は身を乗りだした。 「白山のアリバイだとぉ」 「まあね。耳の穴を」 菊野弁護士はカバンのなかからとりだしたミニテレコをテーブル のうえに載せた。 「かっ穿って、この証言をよおく聞いてくれないか」 菊野弁護士はテープレコーダーの再生ボタンを押した。 すると、『うな梅』で録音してきた女将の証言が生々しく検事室に ながれはじめる。
菊野『先日、あの老舗の暖簾を潜ったときのことだった。暖簾を潜る と右手には広さ二坪ほどもある水車小屋があった。垂れおち流れる 水力で水車が回転する水音が印象的だった。女将の歯切れのいい 証言に混じって水車の水音まで収録されているはずだ。その水音が 背景に流され女将の証言の信憑性は、いっそうたかめられるだろう』
やがて録音の再現はおわった。 「というわけなんですがね」 菊野弁護士は自信に溢れた表情になった。 「なるほど。いかにも」 五十嵐検事は背筋を延ばして腕を組んだ。 「もっともらしい証言だが。検察としても、そのウラをとってみなければ、 アリバイが成立するかどうかは断定すことができない」 「だったら、早急にそのウラをとり、その信憑性を確認し、公判担当 検事と協議して、速やかに公訴を取り下げてほしい」 菊野弁護士は検事に迫った。 「でもすでに事件は裁判所に係属してるんだからアリバイの証明は 第一回の公判期日でするのが筋ではあるまいか」 五十嵐検事は弁護士の要求を跳ね返した。 「それはたしかに手続上の建前としては、検事の仰るとおりだが、 公判期日までには、まだかなりの期間があるし、公判廷でアリバイ が証明されれば、無罪放免ということになる。そうなれば検察側が 汚点を残すことになる。そうだとすれば公判期日前に、公訴を取り 下げたほうが賢明ではないかな。そうすれば、それだけ裁判所の 負担も軽減されるはずだ」 「いわれてみれば、たしかにそうだが。とにかくアリバイののウラを とってみましょう。そのうえで部長とも協議して一両日中に結論をだ すことにします。そういうことでひとつ」 「それではこれで」 菊野弁護士はカバンを引き寄せ腰を浮かせた。
杉山検察事務官がハンドルを握った黒塗りの公用車が奥多摩街道 をはしりつづける。 五十嵐検事は後部座席に凭れている。 「都心から郊外にでるのは」 杉山検察事務官はなハンドルを握りなおした。 「ほんとうに、ひさしぶりですね」 「そうだね」 五十嵐検事はシートに凭れ、街道に沿って流れくだる多摩川の清流 をみおろしている。 「都心とはちがって、さすがに空気も爽やかだな」 やがて公用車は梅林市の市街にはいり、梅林駅前通りにでた。 そこを右折し多摩鉄道の線路脇の有料駐車場に滑り込んだ。その 駐車場に車をあずけた。 ふたりの検察官は肩を並べ、小高い丘のうえに建つ住吉神社の 参道に通じる横丁の狭い道をゆっくりすすんだ。 住吉神社の境内は杉の森にかこまれていた。その杉の木が群棲する 小高い丘の手前で、杉山検察事務官は、地図を描いたメモを片手に鰻 の老舗『うな梅』を模索する。 古風な街並みの小路にでて、その奥をみわたした。すると白い生地に 黒く太い文字の暖簾が視野にはいった。 「あそこみたいですね」 呟いた杉山検察事務官は歩幅をひろげた。こつこつと自分の靴音が 頭の芯にまで染みこむような静寂の淀む小路を踏み締め老舗の暖簾 に接近しゆく。 杉山が先に暖簾を潜った。五十嵐があとから暖簾を潜った。 人気のしない客席のカウンターの奥が調理場になっている。店の右側 は畳の座席になっている。その奥には、映画のセットのように杉皮で屋根 を葺きあげた二坪ほどの水車小屋が清涼なムードを醸しだしている。 蒼黒く苔むした水車が水音を撒布しながら回転する。みるからに自然 な風景が心を和ませてくれるのだった。 カウンター脇の柱に掛けられた『日捲りカレンダー』が黒く太い文字で 1999年5月25日をしめしている。 セピアで木彫風の縁取りをした壁時計の長針がぴくりとうごき午後2時 になった。 昼下がりのせいか客はだれもいなかった。 「いらしゃいませ」 カウンター超しに歯切れのいい板前の声が跳ね返ってきた。 「東京地検の五十嵐げすが」 検事はカウンター超しに白衣の板前に名刺をさしだした。 「ちょっと、女将さんに、おうかがいしたいことがありまして」 「おなじく杉山です。よろしくおねがいします」 杉山検察事務官も名刺をさしだし軽く頭をさげた。 「検察庁の方ですか。母がなにか」 面長で白衣の板前は訝しげなまなざしになった。 「仕出かしたんでしょうか」 「いいえ。そうではありません。こちらの馴染みのお客さんのことで 教えていただきたいことがありまして」 起ったままの五十嵐検事は低姿勢だった。 「わかりました。それでは」 痩せ型で面長の板前は潜り戸を跳ねて調理室からでてきた。 「こちらへどうぞ」 板前は水をうったばかりの石造りのタイルを踏んでいちばん 奥まった部屋に案内した。 「こちらで、ちょっと」 板前はあがり框で腰を屈め襖を開ける。 「お待ちください。いま母を呼んできますから」 五十嵐検事があがり框で靴を脱ぎ部屋にあがった。杉山検察事務官 も靴を脱ぎ、二足の靴をきちんとそろえた。 ふたりの検察官は紫檀のテーブルをかこんで座布団に座った。 天然木の節目を活かした黒光りがする床框を填め込んだ幅3尺ほど もある床の間には、川合玉堂が描いた山水の掛け軸がかけられ、周辺 にはひんやりとした物音ひとつしない静寂が漂っていた。 すうっと襖が開いて和服姿で初老の女があらわれ、ものしずかにそっと 襖を閉める。 「いらっしゃいませ」 初老の女は藺草の香りがする青畳に両手をついた。 「女将の絹ともうします」 襖が開いて板前がお茶をはこんできた。 「粗茶ですが。どうぞ」 女将は木彫りの茶托に載せた罅割れ焼きの茶碗を紫檀のテーブル のうえにさしだした。 「どうぞ。おかまいなく」 五十嵐検事は、こざっぱりした絹の着物姿と身のこなしに、いまは亡き 母の面影をオーバーラップさせた。 「さっそくですが」 五十嵐検事はお茶をひとくちすすった。 「この5月12日の夜、植木職人の石川流之介さんが、こちらに、お見え になりませんでしたか」 「あら。流ちゃんのことですか。いえね。その」 薄化粧をした絹の目はきらりとひかった。 「流之助さんとは幼馴染なもんですから、いまだに流之介さんのこと を流ちゃんと呼んでるんですよ。ええと。そうですね。5月12日の夜 ですか。たしかにお見えになりました。流ちゃんは、うちにとってたい せつなお客さんのひとりですからよく覚えています。そういえば先日、 弁護士の菊野先生からも、おなじことを聞かれましたけど」 「なるほど。そうでしたか。石川さんがお見えになられたときに、 どなたか同席された方はおりませんでしたか」 「はい。その夜も、この部屋にご案内したんですが、司法書士の白山 先生がごいっしょでした。流ちゃんのはなしによると、土地の登記の ことでお世話になったお礼の宴席だということでした。多摩地区の人 で白山先生をしらない者はおりません。うちの店は有限会社ですから 商業登記で白山先生のお世話になっております」 「そうでしたか。それで当夜、そのおふたりは、何時ごろこちらに お見えになりましたか」 「そうですね。たしか店のテレビでは、ちょうど7時のニュースが はじまっていましたから7時ごろということになりますか」 「なるほど。それで」 五十嵐検事は絹に微笑みかけた。 「そのおふたりは、何時ごろまで、この部屋におられましたか」 「はい。閉店までいらっしゃいました。ですから10時ろごまでと いうことになります」 薄化粧で香水の匂いを漂わせた絹は、歯切れのいい声で そつなくこたえた。 「そうでしたか」 五十嵐検事は座布団のうえで座りなおした。 それに釣られるように杉山検察事務官も座布団のうえできちんと 正座した。 「5月12日の夜のことは、よくわかりました。貴重な情報をご提供 いただき、ありがとうございました」 「いいえ。どういたしまして」 「ええと。それでは」 五十嵐検事は焦げ茶色で木彫風の表紙をつけたメニューを捲り はじめた。 「鰻重の特上を2人前おねがいしましょうか」 「はい。かしこまりました。裂きたての鰻を焼きあげますので、 ちょっとお時間をいただきます。それでお飲み物は」 絹は検事の顔をうかがった。 「ええ。まだ仕事中ですので、飲み物は遠慮しておきましょう」 「かしこまりました」 畳に両手をついた女将はしとやかな身のこなしで襖のそとへ 消えていった。
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