騒々しい沈黙が脳髄を貫く。
痛すぎて何も聞こえない。
止まない耳鳴り、爆音、そして無音。
聲を嗄らした僕の叫び声が聞こえますか。
気が付くと僕は屋上に立っていた。 歪んだ違和感。 見慣れた景色は、間違いなく僕が通う学校のものだ。 僕は一人で立っていた。 曇っているわけではないが、太陽が見つからない。紺碧の空。あの激しい光を放つ物体だけが見当たらなかった。 消滅してしまったのだろうか。 太陽も生命ある物質だ。 世界中の科学者たちが喚いている予定よりも遥かに早く消滅することもあるのだろう。 ああ、きっとそうだ。 太陽は消滅したのだ。 あれは、消えてしまったのだ。 なのになぜ、世界はこんなにも明るい─── 僕の方が消えてしまいそうだ。 太陽はないのに、見渡す景色に反射する光は眩しくて、正視することができない。真夏の陽炎のように全てが揺らめいて、足下が覚束ない。 僕と外界の境界線が曖昧になっていく。目眩とともに全身を駆けめぐる虚脱感は、やがて心地良さに変わる。 ───僕はこの感覚を知っている。僕を連れ出し、解放する感覚。 僕は一人で立っていた。
何かが上空を過ぎった。一瞬、僕にも注がれていた光が遮られる。 それまで無音だった世界に、僕だけだった世界に、強く風を撃つ音が聞こえた。 鳥の羽撃く音だろうか。 外界と接していれば当然であるその音に、僕はなぜか強く惹きつけられた。 彼らは僕が求める手段を用いて種の存続を保ってきた。自らを守るために地上を捨て、自由が溢れていた空へ飛び立った。 今もまだ、空には自由が残っているのだろうか。 僕は空を見上げた。 「そんなもの、始めからないのさ」 そこには人間がいた。 「お前は幸せだな。」 いや、人型をしたものがいた。そして僕に向かって話しかけていた。 「選ぶ権利ができたんだ。俺に会えたからな。」 彼の背中からは、翼が生えていた。 右肩から、白い翼。 左肩から、黒い翼。 「お前は幸せだな。」
テンシ……?
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