夜、しかも明かりのないプールがこれほど怖く見えるのをはじめて知った。まるで飲み込まれたそうな、暗い淵を思わせる。しかししばらくして目が慣れてくると、優しい月明かりに照らされて、ぼうっとプール全体が神秘的に浮き上がってきた。なんてことはない普通の学校のプールが、とても綺麗な異空間を作り出している。そんな気分に浸っているのに、気がせいている3人は早くも服を脱ぎだしている。すでに水着着用だ。俺も遅れまいと慌ててTシャツを剥ぎ取り、ジーンズを脱ごうとした。が、あれ?何かおかしい。なんで普通のパンツなんだ?3人は早くもプールに飛び込みはしゃいでいる。 「カズ君、何してるのぉ、早くおいでよ」 智が声をかけるけど、行けるはずがない。何で俺っていつも肝心なところでドジなんだろう。 「悪い。俺海パン忘れたみたい」 「ええ!何でよぉ。せっかく必死の潜入だったのにぃ」 智ぉ、そう言うなよ。俺が一番凹んでるんだから。 「何?どしたん?カズ海パン忘れたの」 弘樹もうるさいってば。 「気持ちいいぞぉ。パンツで入っちゃえば?」 面白半分に言ってるんじゃねぇって。帰りはどうすんだよ。濡れたパンツにジーンズはいて帰るのか?くそぅ入りてぇ。マジで気持ち良さそうだもんなぁ。夜だし素っ裸なんてどうだろ、一瞬変な考えが頭をよぎった。 「フルチンでいいすかぁ?」 その変な考えを抑えることが出来ずに、きわめて冗談ぽくプールの中の3人に声をかけた。あははと声をあげて笑う弘樹を除き、意外にも女性2人は、 「いいよぉ!夜だし見えないよぉ」 と軽やかに言ってのけた。マジかよ、口の中でもごもごとつぶやく。もうどうなっても知らねぇからな。俺は勢いにまかせてトランクスを投げ捨てた。
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