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作品名:10years 作者:空を仰ぐ人

第7回   〜7〜
「マジでここから入んのかよ」
弘樹が心配そうな顔で振り返る。無理もない。俺たちはどこからどう見たって『こそ泥』だ。しかも俺たちのいる歩道は、真夜中ということもあって車の往来こそ少ないが、トチノキ並木が続くわりと広い大きな通りだ。この通り沿いにいくつかの学校が点在していることから『文教通り』と名がついていた。
 智の母校、石橋高校のプール脇、ネットフェンスの破れた箇所に4人はいた。
「弘樹君早く早く。後がつかえちゃうから」
ここでも智はひとり気を吐き元気だった。
「こりゃあ進学校の生徒が勧める行為じゃないなぁ」
俺が言うと
「あら、カズ君知らなかった?」
「何が?」
「あたし落ちこぼれだから」
いつもの可愛い笑顔。でも俺は知っている。この進学校の中でも智の成績はいつだってトップクラスだ。担任から早稲田への進学を勧められていたことも、俺は別な人間から聞かされていた。そんなことを聞くたびに『不釣合い』という言葉が脳裏をよぎり、俺は少し暗い気持ちになる。どうして智は俺なんかを好きになったのだろう。
 そう俺たちの付き合いは智の告白から始まった。


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