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作品名:10years 作者:空を仰ぐ人

第6回   〜6〜
 4人それぞれに違うパスタを注文し、適当に突付きあってそれを食べた。智とチャコは食後に運ばれたクリームソーダを飲んでいる。俺と弘樹はアイスコーヒー。店内には人工の滝があり、時間差で水が流れたり止まったりしていた。ものすごくちゃちな作りの滝だったが、涼しさの演出には十分役立っていた。
「今日これからどうするん?」
弘樹が3人を見渡しながら言った。
「結構汗かいたから家に帰って着替えたいし」
智が言うとチャコも
「あたしもバイトで汗かいたから家でシャワーしたい」
「チャコちゃん、少しゆっくりしなくていいの?」
「したいなぁ。お昼寝したい」
「あたしもお昼寝賛成!」
智が可愛い笑顔で手をあげた。
「そっか。いやプールにでも行こうかと思ってさ」
弘樹が少ししょんぼりと言った。
「別にプールなんて今日じゃなくてもいいじゃん」
「だってカズもチャコもバイトばっかだし、智ちゃんは教習所だし。なかなか4人じゃ行けないじゃん」
「それならさ、いい案があるよ」
智が言って、俺たち3人は智を見つめた。
「あ、今さ、さすがに年増は違うとか思ったでしょ?」
「思ってない思ってない」
3人で苦笑いしながら声をそろえて言った。
「弘樹君さぁ、味気ないプールでもいい?」
「味気ないプール?」
「うん、味気ないプール。でもスリルは満点かも」
俺だけかもしれないが、何か嫌な予感がしてきた。その予感は智が引退したばかりではあるが、高校で水泳部員だったということに起因している。
「そんなプールあるん?」
「うん、うちのガッコのプール!」
やっぱり・・・。指まで立ててすごく嬉しそうに言う智。こんな時の表情が一番素敵なのはなぜだろう。
「一休みしてさ、夜に忍び込もうよ」
優しい笑顔でひどく大胆なことを言う。
「うわぁ、それ面白そうだなぁ」
ここに馬鹿が一人いる。子供みたいに目を輝かせて。少し呆れつつも諦めの表情でチャコを見たら、彼女も同じような顔をしてため息をついていた。でも俺もチャコも決して嫌な表情はしていなかったと思う。俺たち4人が集まれば、いつだってこんなことばかり。それが楽しくてしょうがなかった。


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