「じゃ、姉御、智を送るからまたね」 「はいはい。二人乗りなんだから気をつけるのよ」 俺は智の手を引いて駐輪場へ向かった。早く姉御の前から離れて智に聞きたいことがあったからだ。 「ごめん。俺、なんか言い過ぎちゃった?」 「どうして?」 さっきの切なそうな表情が嘘のように、あっけらかんと智は聞き返す。 「だって切なそうな顔してたから」 「だって柿沼さんとカズ君、いちゃいちゃしてたもん」 「へ?いちゃいちゃなんてしてないって」 「してたもん。あたしね、今日は車に乗る日でね」 「うん」 「少し早めに終わってね」 「うん」 「待合室の外で二人を見てたんだよ」 「・・・」 「あたしの知らない何かがあるの?柿沼さんと」 「ないない。神に誓ってない」 「ほんと?ほんとに何もないの?」 「ほんとにないよ。もしかしてそれであんな表情を?」 「だってぇ・・・」 「やきもちってやつ?」 「ばか」 なんて可愛いんだろ。とても年上とは思えない。最近では愛しささえ感じる。それを再認識出来る一瞬だった。
|
|