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作品名:10years 作者:空を仰ぐ人

第3回   〜3〜
「ほら、智ちゃん戻ってくるよ」
「だったらこの手をはなしてくれる?」
「一度でいいから、後ろに乗せてくれるって約束したら」
舌をだしながら言うもんだから、こっちは本気なのかどうか全く分からない。
「本気で言ってないだろ、姉御」
「バカ。ほんとに鈍いんだから」
全然怒ってない顔で姉御は言った。しかしまだ俺の頬をつねっている。
「あぁ、カズ君!待っててくれたの?」
智が小走りに近付いてきた。俺と姉御の顔を交互に見て、
「また何かやったの?」
と、少し切なそうな顔をした。
「ほらみろ。誤解されちまったじゃねぇか」
俺は必至の眼差しを姉御に向ける。
「こいつったら堂々と煙草なんか吸ってるから注意してたのよ」
機転を利かせた答えのつもりなのだろうか、とにかく姉御は智にそう言った。
「だめだよカズ君。煙草は」
「今更何を言うか、この小娘は」
相当おちゃらけて言ったつもりだったのに、智はまた切なそうな顔をした。話題を変えて早くこの場を切り抜けなくては、なぜか俺はそう思った。


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