コンビニは客の出入りが多い。当然頭にくる連中の数も比例して多くなる。ぶん殴ってやろうか、そう思える客が何人もいる。でも、ま、今日も無事に終えたことだし良しとしよう。楽天家な俺はあまり気持ちを引きずらない。 店に残った連中にお疲れ様と言って、俺は店裏のバイク置き場へと急ぐ。バイクのシートサイドのフックに二つのヘルメットがぶら下がっていて、夏の午後の日差しをまぶしく反射させていた。俺は空を仰ぎ、夏雲の様子をうかがった。今日の夕立はなさそうだ。日差しとは裏腹に、吹く風に湿気は少なく気持ちよかった。 俺はバイクに跨りエンジンをかけると、暖気もせずにスタンドを蹴り上げ、チャコのバイト先であるドラッグストアに向かった。 ものの2分とかからないうちにドラッグストアに着いてしまった。建物の陰にバイクをとめて、自販機で清涼飲料水を買いながら店の中を覗いてみた。3列並ぶレジの真ん中にチャコの姿を確認した俺は、バイクに戻りシートに腰掛け清涼飲料水を飲んだ。同じくらいに上がれるようにする、チャコはそう言っていた。そのうちここへ来るだろう。 煙草を2本吸い終えたところで、チャコがバイトを終えてやってきた。 「ごめん、待った?」 「いや、そんなには待ってないよ」 「煙草2本てところ?」 「相変わらずするどいな。吸殻は缶の中だってのに」 「だって智ちゃんより長くあんたを見てるよ」 「そういえばそうだったな」 「このバイクだって」 「ん?」 「一番最初に乗せてもらったのはあたしだもん」 「そうだったな」 「久しぶりだなぁ、カズのバイク」 俺は何も言わず、ただ微笑んでヘルメットを手渡した。 「じゃ、行くか」 「うん、オッケー」 「しっかりつかまってろよ」 「ヒロの運転で鍛えられてるから」 あはは、と二人同時に笑い、俺はバイクのエンジンを始動した。
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