とある町の北側。
男はいつものように亡き家族に思いを馳せる。
「………」
男の見つめる先はいつも、男の幸せのあった場所。
「………」
ふと思い出す。
ここに自分と同じようにたどり着いて、
自分とは違う道を歩んでいった生意気な少年の姿を。
「………」
男は思う。
自分はまだここに立ち止まっているんだな、と。
立ち止まっていては前に進めない。
そんなことは分かっていた。
だけど今まで一歩を踏み出せずにいた。
――それも今日で終わりだ。
「和美、あゆみ、俺もそろそろ行くことにするよ」
男は新たな一歩を踏み出す。
過去の幻影を振り払うように。
――でも決して忘れたりはしない。
思い出を胸に、
過去に囚われることなく、
まだ見ぬ明日に足跡を残すために。
「……絶対に生きて、墓参りに行くから……」
そうして人は歩いていく。
「……またな」
約束された未来なんてどこにもない。
それでも見えない明日に怯えることなく、
明日を希望で照らすために。
――人は歩いていく。
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