探偵からの奇妙な知らせに美佳は仰天した。 「ぜひ会って話がしたいと言うんだ」という申し出の主が、以前探偵に見せられた写真に父とともに写っていた女性だというのだ。 「話って・・・、どんな話なんですか?」 「それは分からない」 「第一、この女性が何者なのかも分からないんですよ」 「まあ、そうだね。分かっているのは、君の父親と特別親しい関係にあるかもしれないと言うことだけだ」 探偵はまるで他人事のような口調である。実際のところ、彼にとっては他人事に違いはない。 「そんな女性が・・・」その時美佳の脳裏にある考えが浮かんだ。 「そうだよね。君のお母さんならまだしも。その子供に会いたいと言うのは、どうにもね」 「会えば、すべてがはっきりするんじゃないですか」 「まあ、そうだとしても、それですべてが解決する保証はないし、色々な選択肢が考えられるよね」 会わずに、このまま頬かむりをして行くのも選択肢の一つには違いない。 「一つ教えて貰えないか?」 「何を、ですか?」 「今、君がお父さんをどう思っているかだよ」 「そんなの聞いて、どうするんですか」自分の内心に入り込もうという不純な意図を嗅ぎ取って、美佳は声を荒げた。 「何かアドバイスができるかもしれない」 相手の事を知りもしないで有効なアドバイスができるという考えは、どうして生まれるのだろう。
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