20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:家族ゲーム 作者:奥辺利一

第12回   内緒話
「二人は会ったの?」
「会ったらしいよ。美佳に変わった点は見られない?」
「そうね、特にはないけど、少し吹っ切れたみたい」
「そう。それは良かった」
「でも、あのことは話さなかったんでしょ」
「うん。念を押しておいたから、話さなかっただろう」
「そう。それで良かったのかしら」
「いつまで黙っている積もりなんだい」
「さあ、どうしたらいいのかしら」
「そろそろ打ち明けてみたら」
「そうね。そうすれば心が軽くなるわね」
「ひかるちゃんの方は、初めはずいぶん混乱したようだけど、今は楽しんでいるようだから、ひとまず安心と言う処だね。そのうちに会ってやるんだろう」
「勿論。一度だって忘れたことはないけど、勇気が出ないの。いろいろご迷惑をかけてしまって、すみませんでした」
「これも何かの縁だから、気にすることはないけど、吉川さんはどう考えているんだろう?」
「彼は仕事一筋の人だから・・・」
「こう言っちゃあなんだけど、今更元には戻らないのは分かっているけど・・・、これから二人とどう向き合って行く積もりなの?」
「出来れば、このまま続けられれば良い、と思うしかない気がする」
「何れ分かることになっても、きっと理解してくれると思うよ。と言うのは、身勝手すぎる話かもしれないが」
「そうね、ひたすら謝るしかないわね」
「そんなに悲観的にならなくてもいいんじゃないか。二人とも良い子だから分かってくれるよ」
このとき隣の席で聞き耳を立てていたのは石黒卓だった。この様子はその日のうちに美佳の耳に入っていた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1844