「二人は会ったの?」 「会ったらしいよ。美佳に変わった点は見られない?」 「そうね、特にはないけど、少し吹っ切れたみたい」 「そう。それは良かった」 「でも、あのことは話さなかったんでしょ」 「うん。念を押しておいたから、話さなかっただろう」 「そう。それで良かったのかしら」 「いつまで黙っている積もりなんだい」 「さあ、どうしたらいいのかしら」 「そろそろ打ち明けてみたら」 「そうね。そうすれば心が軽くなるわね」 「ひかるちゃんの方は、初めはずいぶん混乱したようだけど、今は楽しんでいるようだから、ひとまず安心と言う処だね。そのうちに会ってやるんだろう」 「勿論。一度だって忘れたことはないけど、勇気が出ないの。いろいろご迷惑をかけてしまって、すみませんでした」 「これも何かの縁だから、気にすることはないけど、吉川さんはどう考えているんだろう?」 「彼は仕事一筋の人だから・・・」 「こう言っちゃあなんだけど、今更元には戻らないのは分かっているけど・・・、これから二人とどう向き合って行く積もりなの?」 「出来れば、このまま続けられれば良い、と思うしかない気がする」 「何れ分かることになっても、きっと理解してくれると思うよ。と言うのは、身勝手すぎる話かもしれないが」 「そうね、ひたすら謝るしかないわね」 「そんなに悲観的にならなくてもいいんじゃないか。二人とも良い子だから分かってくれるよ」 このとき隣の席で聞き耳を立てていたのは石黒卓だった。この様子はその日のうちに美佳の耳に入っていた。
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