近所のS公園にて。今日も誰も居ない。 私たち姉妹はここが好きだ。近所に子供が少ないのか、いつも私たち二人だけなのだ。遊ぶことは決まっていた。砂場でアニメキャラクターやお互いの顔を描くのだ。それに飽(あ)きるとブランコがあるところに紀美ちゃんが走って行き、それも飽きたらかくれんぼをする。 「ジャンケンポン!」また私がオニ。 「もういいかい」 「まあだだよ」 その言葉の掛け合いを三度ほどしたところで紀美ちゃんの声が返ってこなくなった。 この小さな公園の中じゃ隠れる場所が全くないといってもいい。私はこれじゃかくれんぼにならないなぁ、と思いながらいつものように紀美ちゃんを探して、いや探すフリをしていた。 「あれぇどこかな。いないなぁ」 そう言いながら、砂で盛った山の中にT字型の筒を逆さまにしたものを埋めたような――ドカン山、私たちがそう呼ぶ遊具の周りをなるべく見つけないように探し始めた。隠れる場所といっても山か公衆便所しか隠れる場所はないのだけれど。 「あれれ。いないなぁ」 ドカンを覗いてはそう言うのだ。いつもならスカートや靴の端が隠しきれていないのだが、今日は珍しく隠れるのが上手だ。どうやらここには居ないようだ。となったら後はあそこしかない。 「ここじゃないのかなぁ」 紀美ちゃんに聞こえるように言って「トイレかなぁ」と続けて公衆便所に向かう。酷い悪臭、酸っぱい臭いで私は顔をしかめた。右手で鼻と口を押さえて鼻声で紀美ちゃんを呼ぶ。 「紀美ちゃ〜ん。ここはナシって言ったじゃない」 便所のドアは閉まっている。公衆便所というのは何でこんなに臭いのだろう。それに怖い。空いたほうの手でドアノブを回す。 「み〜つけた――」開けながら言った。が、そこにはぽっかりと口を開けた便器があるだけだ。蠅(はえ)が飛んでいるのが見えたので反射的に素早く扉を閉めた。 「あれれれ?」 辺りは薄暗くなり始めている。時計台を見ると一七時を過ぎたところだ。 「どこに隠れちゃったのかな?」 「紀美ちゃーん」 私は焦りを感じていた。 「紀美ちゃん、もうかくれんぼはおしまいだよ。出ておいで」 だが紀美子は姿を現さない。もしかしたら公園の外に隠れてるのかもしれない。そう思い公園の周りを捜し歩く。紀美子の気配はない。こめかみを汗が流れた。まさか先に一人で家に帰ったんじゃないだろうか。そんなありもしないことまで考えてしまう。ここから家までの道を紀美子は知ってるかもしれないが、それは考えられない。紀美子はまだ小学校に通い始めたばかりだし、買い物などに出かけるときは母や私から離れようとしないからだ。以前、デパートではぐれた時は周りの目が気になるくらいに泣かれたのを覚えている。 叫びながら紀美子を探し続けた。私の声に気づいた人達が何事かと公園に集まってきた。 「お嬢ちゃんどうしたの。何があったの?」 母と同じくらいの歳のおばさんが心配そうに話しかけてきた。 「妹が、居なくなっちゃったんです」涙が溢れ出した。 辺りはすっかり暗くなっている。 それから皆で紀美子を探し続けたが見つからなかった。 もしかしらた本当に家に向かったのかもしれない。もはや冷静さは失っていた。大人たちが探している間に私はおばさんと家に行ってみることにした。
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