Y.悔悛
マリヤと最後に会ってからどれだけ過ぎたことだろう。 あれ以来、私の時間は止まってしまったかのようだ。 何をしても意味を見いだせない。自分の存在価値を見いだせない。
私についていた弟子が、また一人イエスの元へと去っていった。 イエスの語る教えは、火のように熱く、また水のように人々の心を潤すと聞く。 花嫁を迎えた花婿は、ますます栄え、その名はユダヤの隅々にまで届くことであろう。
私は、何のために生まれたのか? 花婿にお仕えするためではなかったか。 厳しい修行にも耐えたのは何のためか? あらゆる欲望と邪なる思いを切り捨てるためではなかったか。 それなのに、イエスの名を聞いた途端、私の心の底から醜いものが溢れ出てきた。 私から溢れ出す、疑い、ねたみ、憤り、それらを押さえることなど出来やしなかった。
マタイによる福音書 第一四章一節〜四節 【 そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを聞いて、家来に言った、 「あれはバプテスマのヨハネだ。死人の中からよみがえったのだ。 それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ。」 というのは、ヘロデは先に、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕らえて縛り、 獄に入れていた。 すなわち、ヨハネはヘロデに、 「その女をめとるのは、よろしくない」 と言ったからである。 】
やりきれない憤りに身をまかせ失言した咎ゆえに、私は今、獄の中にいる。 神はなぜこのような酷な業を、私に与えたもうたのか? 私が従わなかったからなのか? イエス・・・彼は真に神の小羊なのか?
マタイによる福音書 第一一章一節〜二○節 【 イエスは十二弟子にこのように命じ終えてから、町々で教えまた宣べ伝えるために、 そこを立ち去られた。 さて、ヨハネは獄中でキリストのみわざについて伝え聞き、自分の弟子たちをつかわして、イエスに言わせた、 「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」。 イエスは答えて言われた、 「行って、あなたがたが見聞きしていることをヨハネに報告しなさい。 盲人は見え、足なえは歩き、重い皮膚病にかかった人はきよまり、耳しいは聞え、 死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。 わたしにつまずかない者は、さいわいである」。 彼らが帰ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、 「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。 では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。 柔らかい着物をまとった人々なら、王の家にいる。 では、なんのために出てきたのか。預言者を見るためか。 そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。 『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、 あなたの前に、道を整えさせるであろう』と 書いてあるのは、この人のことである。 あなたがたによく言っておく。 女の産んだ者の中で、バプテスマのヨハネより大きい人物は起らなかった。 しかし、天国で最も小さい者も、彼よりは大きい。 バプテスマのヨハネの時から今に至るまで、天国は激しく襲われている。 そして激しく襲う者たちがそれを奪い取っている。 すべての預言者と律法とが預言したのは、ヨハネの時までである。 そして、もしあなたがたが受けいれることを望めば、 この人こそは、きたるべきエリヤなのである。 】
・・・死を目前にして告げる。
神よ。 御心のままに生きることができなかった私をお許しください。
愛するマリヤよ。 貴方に、私の荷をも背負わせてしまったことを許してほしい。
そして、我が義弟よ。 行く道を違えたことを許しておくれ。
完
【あとがき】
カテゴリー:歴史 「ダ・ヴィンチの福音書」の、外伝になります。 今回は、洗礼ヨハネに的を絞りました。
洗礼ヨハネの両親は、ガブリエルからの啓示を受けて、自分の子が「主の道を備える者」。 従姉妹のマリヤからは「主」が生まれることを知っていました。
それなのに、なぜ洗礼ヨハネやその両親は、主であるイエスから遠ざかってしまったのでしょうか?彼らはイエスの親戚なのにです。
30歳近くになって、イエスと洗礼ヨハネはヨルダン川で出会います。 しかし、洗礼ヨハネは2人の弟子を送るだけで、自分はイエスから距離をおいています。 それらには、何の理由があったのか?
イエスの母マリヤは、天使ガブリエルから啓示を受けた後、急いでエリサベツの元に行きます。そして、エリサベツの元で3ヶ月暮らすのです。 マリヤが3ヶ月そこに滞在したのは、エリサベツの出産のお手伝いのためですか? いいえ、マリヤはエリサベツが出産する前に帰ってきています。 では、何のために、3ヶ月も滞在したのか?
これらの疑問の答えが、今回のテーマになります。 もちろん、これらの小説の内容はフィクションです。 そのうちみのるの聖書・絵画解釈から成り立つものです。
Yahoo!ブログで、また絵画を提示しながら解説していきたいと思います。 どうぞ、お越しになってください。 ブログタイトル名『ダ・ヴィンチの小部屋〜最後の晩餐にご招待』です。
なお、6月23日より、ヤフー側のトラブルで、ブログタイトルで検索しても、ブログが表示されないというトラブルに巻き込まれています。 ブログに入るには、アドレスから入ってください。
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