桜が咲く頃、私たち四人は遊びに行きました。世間はお花見シーズンですが、あえてお花見とは関係ないところへ。 四人が共通して好きなマンガに出てくる場所を巡っています。気がつけばもう夜です。楽しいことはどうして倍速進行なのか。時の神様は不公平です。 「あ〜!ここだね〜ここ!」 「へぇ〜、ここなんだ〜」 海風が吹きつけてくるこの場所で、マンガではちょっと切ないシーンが描かれてました。 「あ、この辺じゃない、あのシーン。」 「お、そうだね、このへんだね。」 日は完全に沈んでいて、照明がなんだかロマンチックなカンジを演出している。と思うのは私が恋をしているからでしょうか。目はついつい思い人を追ってしまいます。ストーカーですか私は。 ふと、ある歌詞が思い浮かびました。たしかこう歌ってたような・・・ <あなたの背中を見つめて 苦味を噛み締めて> <いつまでもそうやって 見つめているのは辛いでしょう> <よくがんばってるね よくがんばったね> <届かなくても 恋はあなたを 輝かせるわ> 私、輝いてるかしら?どっちかっていうと、ドス黒い情念に染まってるような気がしないでもないけど。っていうか客観的に見たら滑稽なのでは?と思わざるをえないわ。 でも私の思い人は輝いてると思う。とても。
私が恋をしている人も、恋をしています。 片思いをして、苦しんでいます。 たまに私に甘えてきてくれますが、泣いているところは見かけません。 何故知ってるかというと、それについて相談されたからです。 私がまだ、親愛のちょっと上の愛情の好きしか伝えていないときに。
別にその片思いの相手が憎いとかは思いません。私は思い人の一番になりたいわけではないので。 だからその相談をされても辛くはないです。 不思議な感覚。自分でも把握できない気持ち。独占したいわけじゃない。でも、好き。
海べりで、眺めが良くてちょっとロマンチックなここは、今は夜ですし、カップルがいっぱいいます。フナムシかおまえら。っていうか蛾か。散れ散れ。幸せ税とるぞ。 とりあえず最初は私たちも固まっていましたが、みんなそれぞれ、黄昏たいときもありますし、別々に歩き始めました。 私は、思い人を探して、斜め後ろを歩いてました。私より高い背が、外灯の影をまたぎました。私もそれをまたぎました。 しばらくして、手すりを背に思い人が振り向いて、私に笑いかけてくれました。それに対して私は曖昧な笑みで応えて、三歩近付きました。 「ねぇ、一個おねがいしてもいい?」 「なに?」 「キスして。」 「ここで?」 「うん。」 思い人は逡巡して、周りを見回した後、私の唇に唇を重ねてくれました。前にしてくれたキスとは違っていました。でも、私には大きな事でした。 「こないだみたいにはしてくれないのね。」 「外だしさ。」 「うん、そだね。」 私は、ちょっと歩いてくる、と言い残してその場を離れました。なんだかいたたまれない気持ちになってしまって。キスしてくれたのは嬉しいはずなのに。私はいつのまにこんな贅沢になったんでしょうか。 気付いたら私は一番眺めのよい場所にいました。周りにはカップルがいます。仲睦まじくこのロマンティックな情景を見つめる人たちを見て、ふと、恋人さんの事を思い出しました。 私を世界で一番愛してくれている人は、私が他の誰かに恋心を抱いていて、今しがたその相手にキスしてもらったことなど知ることもなく、きっと今も私の事を考えているんだろう。そう考えたら、舌を噛み切るかその手すりの先から飛び降りたい衝動に駆られました。でも我慢しました。 ごめんね、と心の中でずっと唱え続けました。伝わってもきっとなんで謝るのか不思議に思うだけだろうから伝わらなくていいです。私のバカ。
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