綾さんと鈴ちゃんは一緒に住んでいる。私と涼ちゃんは実家暮らし。だからよく綾さん鈴ちゃんの家に行く。私一人でもたまに遊びに行く。 「よ〜し、じゃぁCDコピっちゃお〜」 家に入ると鈴ちゃんがパソコンを起動して早速コピーに取り掛かった。私はとりあえず、ソファに座ってみた。やっぱりちょっとだるい。ついでに少し胸が痛い。 程なくしてみんな各々のやることに着手し始めたようなので、私は一言ことわってからソファに横にならせてもらった。綾さんがクッションをもってきてくれて枕代わりに置いてくれた。 眠いわけでも特別に体が辛いわけでもない。ちょっと物思いに耽りたかった。 横になった私の視界には、マンガを読む涼ちゃんと、猫に餌をやる鈴ちゃんと、お湯を沸かす綾さんが映っている。なんだか少しだけ視界がぼやけた。コレ以上ぼやけるとダムが決壊するから私は目を閉じた。
胸が、痛いよ。恋なんて、するもんじゃないね。
と思ってみても、やっぱり恋をしているときのときめきというか、幸福感恍惚感、これが麻薬みたいでどうにも離れられない。恋をしていたい、と思ってしまう。今私は矛盾と結婚してるわ。早く離婚したいのだけど。
あれ?と思った。どうも私は物思いの途中で眠ってしまったらしい。私は目を閉じたまま目を覚ました。周りは静かだった。 ゆっくり目を開けてみると、そこには私を覗き込む思い人の顔があった。 「かわいい寝顔だね。」 にっこりと笑顔でそう言われて、私は胸が痛くて痛くて、あまりにも痛くて苦しくて、ダムの決壊を防げなかった。 水門を開けて適量ずつ開放しておけばよかったのに、不器用で意地っ張りな私はそれができなくて、結局こうなる。 私は泣いた。嗚咽を洩らして泣いた。思い人は驚いた顔をしていた。そりゃそうだ、普通いきなり泣き出されたら驚く。驚かせてごめんなさい。でもちょっと嬉しいんです。驚いてくれたことが。驚かせたことが嬉しくてごめんなさい。 私の泣き声を聞いて、隣の部屋から綾さんが出てきた。そしてソファの横に膝立ちになると、私を起こして頭を抱きかかえてくれた。私の中のダムはまだまだ尽きないようである。キャパが多いのも困りものだなぁ、などと考えていた。泣きながら。
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