私はいろいろな偶然、意図しなかった要素が絡み合ってこの集団にいる。もともとこの三人は仲良しで、その中の一人と私が仲良くなって、そっから他の二人と出会って、四人で遊んだり三人で遊んだり二人で遊んだりして、そして、私は恋をした。 初めはそんなものじゃなかった。ちょっとした興味。と思っていたのだけど、それは立派な恋の芽だったようで、いつのまにか私のあの人を見る目が、苦しさと憧れに彩られていった。 だんだんそれは興味から親愛へ、親愛から愛情へ、愛情から恋心へ。そしてそういう気持ちを隠していられない私はそれを伝えたのである。愛情の時代に。元々恋人はいたし、ちょっとした憧れの残滓というか、LOVEではなくLIKEというか、LOVEとLIKEの間あたりだったから、好意を伝えることが目的だった。それでどうこうして欲しいとか、そういうわけではなかった。 だから、私はあなたのこと好きだよ、親愛以上の気持ちで。と言ったのだ。私は、ありがとうと返された。うざいと思われなかったのは幸いである、と思うことにした。 やがて車はショッピングセンターの地下駐車場に入っていった。そうだCD-R買うんだった。 「上着いらないよね。」 「ああ、外出るわけじゃないしな。」 私らは車を降りて店内入り口の自動ドアをくぐった。その先に何か人だかりができていた。 「ん?なんだあれ?」 「なんだろう?エスカレーター使えないのかな?」 一階へ向かうエスカレーターの側に人が集まってなにやら騒いでいた。よく聞くと、救急車を呼べとか、店員呼んで来いとか、そんな言葉が聞こえてきた。 が、私たちはそれをスルーしようと階段の方へ向かいながらその人だかりを中心を隙間から見た。何か赤いものが見えた。 「げ!やばっ!」 三人が慌てて私の前に立とうとしたが、もう遅かった。私の視界には、倒れた子供の頭から流れてくる赤いものがくっきりと刻まれてしまっている。 そう思った途端、私の膝は活動を停止してしまい、私はへたり込んでしまった。慌てて三人が私の方に駆け寄ろうとするが、視界が低くなったせいでよく見えるようになってしまったその光景で、私の意識はぷっつり切れた。 私は、血が恐いのである。
気がつくと私はソファの上に寝ていた。殺風景であまり広くないそこはたぶん、このショッピングセンターの関係者用の一室だと思う。 起き上がってよく周りを見ると、ますますその予想は的中だと思った。うん、くだらないけど予想が当たるのは嬉しいね。うわ、ホントくだらねぇ・・・ しばらくソファに座っていたら、二つあるドアの一つが開いて、綾さんが入ってきた。 「お、起きた。」 「いや、寝てたわけじゃないっての。」 「似たようなものよ。」 綾さんはパイプ椅子を一脚持ってきてソファに横に座った。相変わらずマイペースな人だ。 「あの後救急車が来て子供は運ばれたわ。エスカレーターから落ちたんだって。一緒に倒れてた咲も運ばれそうだったんだけど、事情説明してこの部屋を貸してもらったのよ。」 「そっか。二人は?」 「買い物。CD-Rとか、あとたぶんこの後家でぐだぐだするんだろうから飲み食いするものを調達。」 「そう。」 「残ったのが何故私なのかは、推して知るべし。」 「一番無難で妥当だから。」 「そういうのはわかっても言うなっての。」 しばらくして二人が戻ってきたので、隣室にいた従業員の人にお礼を言って私たちは部屋を出た。 「いやはや、失敗だったねぇ。」 鈴が苦笑しながらそう言った。 「確かになぁ。不自然な人だかりは先に確認しないとな。」 私が極度の血恐怖症なのをみんな知っている。知っているから率先して私を血から遠ざけてくれる。別にちょっとした血くらいなら大丈夫なんだけど、あそこまでまざまざと死を感じさせるような血はやっぱりダメだった。 意図せず私が右手で左腕を強く握り締めたのを見て、綾さんがそれを静かにほどいた。 「だめよ。」 「あ、またやってた?」 「どうせ迷惑をかけた、申し訳ないとか思ってるんでしょ。」 「たぶん。」 私の自罰癖というか自虐癖というか、それもみんな知っている。こんな厄介なヤツとよく仲良くしてくれるなぁと日々不思議に思う。 そして、感謝すると共に、私にそこまでの価値があるのかと不安にもなる。
私があの人に恋をした事で、この調和が崩れるのを私は恐れていた。
するべきことは決まってる。この恋心が、消えるのを待つだけだ。 まぁ、できるかは別として。 「じゃぁとりあえず鈴の家に向かう方向でいいね?」 「うん。」 車に乗ると私たちはここからさほど遠くない鈴の家に向かった。 車は迷い無く目的地へ向かう。私の心は迷ってばかりで目的地すら見つからない。人生マニュアルとか恋愛マニュアルとかあればいいのに。
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