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作品名:いつも。いつも。 作者:ときね

第3回   いつものことだから
時計は午後の7時を表示した。

もうこんな時間か。
沙耶はソファーから立ち上がろうとした。そのとき
ガチャチャ・・・っと玄関から音がした。
祐一が鍵を開ける音だった。

しばらくすると、ドンっとドアを閉める音がした。

「パパ〜おかえり〜!」
体いっぱいの大声で叫びながら、涼太が祐一の下へ走っていく。
そんな涼太を見ると、疲れきった祐一の顔がほころぶ。

そんな顔、私が話しかけてもしないのにな・・・。
沙耶は、ふと思った。しかし、それもまた、口に出すことはない。

ドンドンと大きな足音を立てながら、祐一が部屋に入ってきた。
もう少し静かに歩けないものかと思いながら
「お帰り」
という言葉と共に祐一を迎える。


祐一は、無造作にポイッと上着を脱ぎ捨てた。
そして、リビングに座ることなく、奥の部屋のパソコンへ向かった。

「今日ね、すぐそこでカップルがケンカしてたの。その内容がね〜・・」
そこまで言うと、沙耶は話をやめた。
パソコンを始めた祐一からは、返事がない。聞いているのだろうか?


一方、祐一は、ちゃんと聞いていた。
しかし、何で帰って早々、こんなどうでもいい話を聞かされるのかと思っていた。
返事をするのも面倒だったし、沙耶が途中で話をやめたことを追求する気もなかった。


お互い、相手に興味がないわけでもなく、邪魔に思っているわけでもない。

ただ・・・

いつもの事だから。

その一言で片付いてしまう感覚だった。



夕飯を、テーブルに並べると、沙耶は、パソコンの前にいる祐一と、祐一にピッタリくっついている涼太を見た。

どうせ呼んでもすぐに来ないだろう。
一体何の為に、帰ってくるのを待って、暖かい料理を出しているんだろう。
せっかくの料理が冷めてしまう。

そんな色んな考えを、一瞬で考えた。いつも思っていることだから、時間は要さない。

沙耶は、お箸を手に取ったまま、
「ご飯できたよ」
といい、二人を見た。案の定、動く気配もなければ、返事もなかった。

沙耶は一人、料理の並んだテーブルの前に座り、二人が来るのを待った。

祐一は思っていた。
今パソコンを付けたところなのに、もう少しやってから食べよう。
なんなら、先に食べてくれていてもいいくらいなのに・。

沙耶は、祐一のそんな考えもわかっていたが、コドモの為、時間をこれ以上遅らせるわけにもいかなかった。

沙耶と祐一の間には、色々と相手に思うことがある。
それは、不満ともいえない曖昧なものだ。
お互い、それを口に出して相手に言うことはあまりない。
いつも同じところで、それを感じ。そして、お互いに口に出しこともなく通り過ぎる。

それは、当たり前のこと。
いつも一緒にいるための、当たり前の行為。


そう。

いつものことだから・・・・・・。



時計が7時25分を表示した。テレビの番組がCMに切り替わった。
祐一が、ようやくパソコンから離れ、テーブルの前に来た。
そして、何事もなかったようにご飯を食べ始める。
沙耶も、笑顔でご飯を食べ始めた。
そこには、どこにでもある家族でご飯を食べる風景が広がっていた。


日中強く吹いていた風は、ようやく落ち着き、リビングの端に置かれた籠には、昼間に風に煽られ、乾燥した洗濯物がはいっていた。


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