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作品名:いつも。いつも。 作者:ときね

第2回   いつものケンカ
最近ケンカをしていないな・・・。



沙耶は、洗濯物を干しながら、歩道に沿って植えられている街路樹をみた。
風の強い日だった。
街路樹は、ガサガサーっと音をたてながら、風になびいていた。

ふと横を見ると、道なりにカーブしているところの歩道で、男女が言い争っている姿が見えた。

じろじろ見てはいけない、マジマジと聞いてはいけない。
洗濯物を干しながら、沙耶は聞き耳を立てた。


「だから、まだ買い物行きたいの」
女性が言った。それを割って入るように男性が言う。
「さっきもさんざん見て歩いたじゃないか!でもいいものが見つからないって何も買わなかっただろう!?もういいじゃないか!」

女性は涙ぐみ、男性は顔を真っ赤にして怒っている。
2人とも凄い剣幕だった。強く吹く風が、2人の怒りを煽っているようにも見えた。

2人の言い争いは、まだまだ終わりそうになかったが、沙耶が聞いた限りでは
女性は買い物に行ったものの、欲しいものが見つからなかったので、まだ他に買い物に行きたいと言っている。しかし、男性は、長時間買い物に付き合わされたのに、結局何も買わなかった女性に腹が立ち、さらに今から他に買い物に付き合わされるのがとても嫌な様子だった。


「なんだ。そんなことでケンカしてたのか」
沙耶は、何だかがっかりした。それと同時に、神経を耳に集中し聞き耳を立てた自分の動力さえも無駄に感じた。

沙耶と祐一ならこんなことでケンカはしない。

濡れたタオルを、洗濯かごから出し干しながら沙耶は思った。
いや・・・違う。最近ケンカしてない・・。

タオルを干し終わると、洗濯物を干す手を止めた。
もう一度、言い争う2人を見た。
内容が問題ではない。お互いに自分のことをわかって欲しくて、真剣に言い争いをしている2人。
今度は、そんな2人が羨ましく見えた。


ドドドドッ!!!
部屋の中から涼太が走り回る音が聞こえてきた。
沙耶はまた、洗濯物を干し始めた。
最後の濡れた靴下を干し終えると、部屋に入り、ソファーに腰をかけた。

そして、一息つくと、またさっきの続きを考え始めた。

最近ケンカをしていないな・・・。

沙耶と祐一にも、朝まで言い争ったり、大きなケンカをしたときもあった。
しかし、最近はない。
少し言い争いになると、沙耶がこう言う
「ケンカをする気はないから、言い争いになるならもういいよ」

少しの間は、ぎこちない雰囲気が流れるが、いつの間にかいつもの生活に戻っている。
問題が解決されたのかもわからないまま・・・。

沙耶はケンカをする度、ケンカをしない方法を考え、実践してきた。
それは祐一も同じだろう。だからこそ最近ケンカしないのだ。

お互い、育った環境も違えば、社会の中での立ち場もちがう、考え方も違う。ふとしたことで考えにずれが出てきても、それは仕方がない。あたりまえのことだ。
話し合って、言い争いになるような問題は、半永久的に同じ事を言い合い、ひたすら相手に自分の考えを押し付けようとしているだけ。お互いに歩み寄って解決できることはそうない。
それに、他に気があって、お互い尊敬し合えるところもあるはずなのに、そんな些細なことが、大きなケンカになって、そんなことも忘れてしまって、すべてが台無しになる方が嫌だった。

でも、これでいいのだろうか??
沙耶にはその答えを出すことはできなかった。

そして立ち上がると、さっき男女が言い争っていた場所を見た。
もう2人の姿はなかった。しかし2人はその後どうしたのだろう?という考えは浮かばなかった。

洗濯物が、飛んでいきそうなくらい、風に強く煽られていた。


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