20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:いつも。いつも。 作者:ときね

第1回   いつも一緒
時計が、7時12分を表示している。

「朝だよ!遅刻!仕事遅れるよ!」
沙耶の声が、家中に響いた。
その声を聞いているのか、いないのか、ベットの上の盛りあがった布団がもモゾモゾと動く。


「ご飯食べないと間に合わないよ!起きて〜〜!」
沙耶が叫びながら、布団をめくり上げると、そこには、よく似た親子が丸まっていた。


時計は、7時45分を表示した。
不機嫌そうに、まず、起きてきたのは、沙耶の夫の祐一。
その後を、チョコチョコ寝ぼけ眼でついてきたのが、3歳になる息子の涼太。

朝はいつもこの調子だ。

食の細い祐一は、パン一個すら食べ切らず、一口分くらい残して、
コーヒーを飲みきると、出勤していく。

沙耶は、そんな祐一をみていつも思う。

私は、もっとたくさん食べて、おかわりしてくれるくらいの人が好き。と。

でも、それを口に出すことはない。
夜ゆっくりしているときに、テレビを見ながら、冗談交じりに言うくらいだ。
だから、祐一も、まったく気にしていないだろう。
それに、そう思うだけで、沙耶は、そんな祐一が好きだ。


夫婦ってそんなもの。
不満のない夫婦なんていないはず。
日常のちょっとしたところで、ちょっと不満を感じたりするけれど、
それはわざわざ口に出して言うほどのことでもないので、
自分の中で消化して、しばらくしたらまた忘れる。


「ママァ・・・ココアは?」
見下ろすと沙耶の横で息子の涼太がつぶやいた。
沙耶も、そんな涼太の一言で、もうさっきふと考えたことは忘れる。

「はいはい。今入れるから座ってなさい。」
沙耶は、そう言うと、食器棚から、マグカップを出し、ココアの粉をいれ、
ポットのお湯を注ぎ、小さい涼太のために、冷たい牛乳を入れて、飲みやすい温度にしてやって、机に置く。

「ありがとう〜ママ」
涼太は、ココアを嬉しそうに持つと、ごく自然にいった。

沙耶は、そんな朝が好きだった。

結婚して4年。いわゆるデキ婚だった。
休日は、必ずと言っていいほど、祐一と涼太と一緒に過ごす。
毎日、なんでもない話をして、涼太を見つめ、二人で、思い出話をしたりする。

それが、祐一にとっても、沙耶にとっても、当たり前のことだった。
いつも一緒にいる。
同じ景色をみて、同じご飯を食べて、同じ部屋で一緒に寝る。

でも、祐一も、沙耶も、ふと思う。
繰り返される、同じような日常、それって幸せなことなの?・・・・
お互い、相手を昔のように好きなんだろうか?・・・


結婚をしたら恋愛は終わり?


でも、そんな考えも、あわただしい日常生活の中に、すぅっと溶けてなくなってしまう。
真面目に考えていないわけではない。
でもそれが普通。
沙耶と祐一は、毎日を過ごす為、頑張っている。
いつも楽しく一緒にいるために。

時計が、8時30分を表示した。
祐一は、もう職場に着いて、仕事を始めている頃だろう。
「急いで洗濯しないと」
沙耶は走り出した。


次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 294