その時、3つの大陸の中で人類は大小無数の国に分かれ争いを繰り返していた。後に『30年戦争』と呼ばれる戦乱の時代である。 長い闘いの中、闘いから逃れ人々が集まる小さな島・ザンスカール島で1人の青年が戦乱の世を終わらせるべく立ち上がった。彼の名はガーズ・ザンスカール。後にザンスカール王国の初代国王となる人物である。 ザンスカール島をまとめ王国の設立を宣言した彼は、大陸へと進出した。 彼の親友にして1人で小国をも滅ぼす強大な力を持つザンスカール王国最高司令官となったザンジバルの活躍もあり次々に小国を統一していった。その力を認めた西のカルディア、北のクストフィーガ、東のエル・プシャロットはザンスカール王国と4国同盟を組みザンスカール王国を首席として、3つの大陸の統一を目指した。 そして4つの国がついにこの戦乱の世に終りをもたらした。ザンスカール王国建国から10年のことであった。 『30年戦争』終結後は、西の大陸はカルディア王国、北の大陸はクストフィーガ王国、東の大陸はエル・プシャロット王国が治め、ザンスカール王国は小さな島、ザンスカール島だけを領土とした。しかし、西のカルディア、北のクストフィーガ、東のエル・プシャロットの国王はザンスカール王の力を認め、彼のもとで各大陸を治めることを誓った。 ザンスカール王は統一された人類の王となったのである。
それから約半世紀、ザンスカール王の人望と、ザンスカール王国の大臣となったザンジバルの力により平和な時代は続いた。
統一から40年たったある日、ザンスカール島で一冊の本が見つかった。それは古代の魔法書であった。世界最高の魔道士といわれたザンジバルはこれに興味を持ち研究を進めた。
それから8年後、ついにザンジバルは1つの魔法を完成させる。 ザンジバルが完成させた魔法とは、召喚魔法であった。ザンジバルはその魔法を用いて一体の生物を召喚した。 それは異世界のモンスターであった…
この魔法の成功に狂喜したザンジバルとは反対に、ザンスカール王はこのことに強い危機を感じていた。ザンスカール王はザンジバルを親友として諌め、モンスターを処分し召喚魔法の研究をやめるように言った。が、それに一切耳をかさないザンジバルをついに王は暗殺することを決意する。 親衛隊長スェヴン、魔導部隊隊長レザビックがその任にあたった。しかし、老いたとはいえ世界最高の魔道士であるザンジバルを殺すことはできず、ザンジバルに深手を負わせた代償にスェヴンは死亡し、レザビックは瀕死の重傷を負った。 『魔法の発展のため必要な研究なのだ、なぜ邪魔をするのだ、ガーズ!!』 そう言い残し彼はどこかへと姿を消した。
それからしばらくして、世界中にモンスターがあふれた。大陸の3つの国は全力でモンスターと戦った。島国であるザンスカールにモンスターの脅威はまだ現れていなかった。
ザンスカール王はザンジバルの行方を探した。モンスターが現れた原因はザンジバルであると確信していたからである。
そしてはるか北、何者も寄せ付けない岩と氷の大地にザンジバルがいることをつきとめた。ついにザンジバルの行方を見つけたザンスカール王は総力をあげてザンジバル討伐を行った。討伐隊には、ザンスカール王国司令官クリシュナを隊長に、ザンスカール軍の約半数に加え、傷の癒えた魔導部隊隊長レザビック率いる魔道部隊ら、さらには剣術大会、武術大会の上位者などからなる義勇軍が参加した。 3大陸の王国から兵を出すことを、ザンスカール王は拒んだ。他の三カ国ではモンスター掃討の為に兵が必要であった。それに比べザンスカール王国では、モンスターはいまだ現れず、自国の防衛に割く兵が必要ないことがその理由であったが、王の心中では自らの国が出した過ちを、友が犯した罪を、自らの手で裁きたいと言う思いがあった。 討伐隊は平和への願い、ザンスカール王国の名誉、そして王の想いを背負い、はるか北の大地へと旅立っていった。
それから半年が過ぎた。
しかし、討伐隊の誰一人帰っては来なかった。
モンスターは増えつづけ、ついにザンスカール島にも現れた。 ザンスカール王は絶望を感じ、自らの国の力だけではもはや解決は不能であると悟った。 それまで自国の防衛に専念していた3つの大陸の王国もザンスカール王国からの要請もあり、ザンジバル討伐を決意し討伐隊の編成にあたっていた。すべての精鋭を送り込んだザンスカール王国では自国の防衛が手一杯で討伐隊を出す余裕は、もはや無かった。 もはやザンスカール王国は王の人望だけで成り立っているような力の無い小国であった。
しかし、王は1人の剣士のことを思い出した。ザンジバルが召喚魔法を完成させる前、2年前に開かれた剣術大会において優勝した男である。その後編成された討伐隊には、修行中の怪我のために参加することはできなかったが、最近、その傷が癒えたという。 王はこの1人の剣士をもっとも3人の国王のなかで信頼しているガルディア王国の討伐隊に加わることを要請した。そして彼の手でザンジバルを倒すことを願ったのだ。
彼の名は、カイン。 ザンスカール王国の名誉がこの1人の剣士へと託されたのである。
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