「ほら、ここがガウスの店だ。」
連れてこられた店は、アンティークなアクセサリーやいわくありげな宝石類などが、所狭しと並べてある 店だった。
「よう、久しぶりだな、アル! 今日はかわいい子を連れてるなんて珍しいな。」
店の奥から小柄な痩せたおじいさんが出てきた。昔からの知り合いらしく、アルバートとにこやかに 話した後、こちらに顔を向けた。
「森のおばばのおつかいだって?」
「あっはい。そうです。」
「そうかい、ちょっと待ってくれ。奥に取りにいってくるから。」
そう言って店の奥の方に行ってしまった。することもなく、優は店の中のものを見渡した。 銀細工のネックレスや、何の宝石か分からないが怪しく光るブレスレット。 ふと、ひとつの指輪が気になった。銀でできているのかとてもシンプルな指輪。なんの模様もなく ただのリングなのだが、どうしても気になる。 優がその指輪を手にすると
「おや、それが気になるのかい? 指輪に気に入られたかな?」
「え? 気に入られる?」
奥から戻ってきた店の主人は、指輪と優を交互に見た。
「それはもしかして、貴聖石か?」
アルバートがいつのまにか横に来て、指輪を見つめる。
「おう、その通り。その指輪は人を選ぶからな。他の指輪に紛れさせておいたんだよ。 どうやら娘さん、気に入られたみたいだが、買っていくかい?」
「え? 私、、、お金持ってないんで、、、すみません。」
「俺が出そう。」
「え??」
優が突然の事にあたふたしているまに、アルバートはさっさとお金を払ってしまった。 その指輪はかなりの値段がするようだった。
「あ、あのっ そんな申し訳ないです! 私、何もお返しできませんし、それにお金を出してもらう 筋合いがないですし、、、、!」
必死に優が訴えると、アルバートはにっこりしてこちらを振り向いた。
「貴聖石はめったにお目にかかれないんだ。それに、選んでもらったらちゃんとつけてやらないとな。 まあ、さっき怖い目にあわしてしまったから、そのお詫びだと思ってくれればいい。」
はじめて見るアルバートの笑顔に、何も言い返せなくなってしまった。 おそるおそる指輪をはめてみると、指輪がほんのり温かくなって形が変わりだした。
「な、何? この指輪、、、。」
みるみる形が変わり、羽の広げた天使の形になった。
「ほう!! こりゃいいもん見せてもらった。こんな美しい形に変わったのを見たのは初めてだ!」
店の主人が感心したように声をあげた。
「美しいな。貴聖石は人を現すという。」
それって私、美しいってこと???店の主人やアルバートに見つめられて、優は顔が赤くなったり 青くなったり、指輪を見つめながらおろおろした。 ようやく店の主人から魔女のおつかいの品物を受け取り、半分呆けたまま店を出て、ふと隣に立つ アルバートを見上げた。アルバートはまた深くフードをかぶっており、こちらの視線に気づくと
「ほら、行くぞ。」と、優を促した。
「ええ? どこに??」
「どこって、おばばの所。おばばの知り合いをちゃんと送らないと、後でいびられそうだからな。」
優が目を見開いて固まっていると、アルバートは優の腕を取り、ずんずん歩き出した。
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