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作品名:女神の愛し子 作者:夢あい

第8回   8
ソニア通りはメイン通りらしく、道幅は広く人通りも多かった。立ち並ぶ商店はどこも賑わっており
買い物をする人や、行き交う人でかなり混み合っていた。
優も、うきうきと気になる店を眺めながら歩いていると、ふいに目の前に立ちふさがるものがあった。

「よう、かわいいねえちゃん。俺と遊ばない?」

顔を向けると、にやけた柄の悪い男が立っていた。急なことに、返事ができないでいると

「ほらほら、あっちにいい所がある。行こうぜ。」

男は、優の腕をつかんでぐいぐいとひっぱって行こうとした。

「あ、あの! やめて下さい!」

優が必死に言っても、聞く耳もたずにずるずると引きずっていく。恐怖にひきつりそうになっていると

「おい。嫌がってるぞ。」

声が聞こえてくるのと同時に、今までひっぱっていた男の腕が離れ、さらに男がしゃがみこんだ。

「ほら、今のうち。」

今度は別の男にひっぱられて、先ほどの場所から遠く離れていた。助けてくれた男は頭からすっぽり
フードをかぶって顔が見えない。黙々と歩いている男に戸惑いながらついていくと、男がぴたっと
止まった。

「あの、ありがとうございました。」

優がなんとか礼を伸べると、フードの男はこちらを向き「いや、、」と小さく返事をした。
フードの男は優より頭一つ分大きく、優は見上げる形になって男の顔がなんとなく見える。

「あっ、、、アルバートおう」

優が言いかけた途端、フードの男は突然優の腕をつかんで、路地に引っ張り込んだ。
そして、壁に押しつけるようにするとナイフを優の首元に当て、鋭い目を向けた。

「おまえっ何者だ!!どこの手のものだ?言え!!」

びっくりして目を見開き答えられずにいると、さらにナイフを押しつけてきた。

「あ、、、、私、、、し、神殿で見て、、、、、。」

咄嗟にそう答えると、ナイフを持つ手を少し緩め息をはく

「神殿で?本当か?神官ども、あれほど口止めしたものを。」

まだまだ疑惑の目を向けられながらも、ナイフが遠ざかった事に安心して優はさらに森の魔女に
おつかいを頼まれたことを伝えた。

「森のおばばの? そうか、ならおまえは大丈夫なんだろう。すまないな、こんな所で俺を知ってる
 者がいるとは思わなかったから。」

「え?だってあなたは、、、。」

「ん? 俺はまだ隣国に留学していることになっているし、第二王子である俺のことなど知ってる者は
 この国じゃすくないぞ?」

「そうなんですか? すみません。この国の事情がまだよく分からなくて、、、。」

「そうか。まあいい、送ってやるからついてこい。」

「え? あ、はい。」

慌ててアルバートの後を追いかける。
  アルバート王って第二王子だったの? それにこんな所に1人で何してるの?
ぐるぐる疑問は頭の中をめぐるが、いくら考えても答えが出るわけはなく、必死に追いかけた。


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