「あら? 今の光って、、、、うそまじ、、、、、、。」
光を感じた後は、目の前の風景が一転していた。 先ほどの質素な部屋から一転、目に美しい緑に覆われた森の中に立っていた。
「私って、最悪の人生歩んでる? 今度はどこ? また別世界なの?」
ふらふらと歩き出した森は、どこまでも美しく清々しかった。鳥の声があちこちから聞こえ 目の前には、湖が見えてきた。湖まで来ると、開けた場所になっていて、湖のほとりには 色とりどりの花々が咲き乱れていた。 ふと、右の方に目をやると、一軒の小さなかわいい小屋が建っている。 吸い寄せられるように小屋の扉の前まで行くと、ひとりでに扉が開いて中から、やさしい声が 聞こえてきた。
「いらっしゃい。どうしたんだい? ここは何もないところなのに。」
小屋の中におずおずと入ると、中にはふっくらとした小柄なかわいいおばあさんが暖炉の前の椅子に 腰掛けていた。
「あの、突然にお邪魔してすみません。私、なんだか迷子になっちゃった気がするんですが、 ここはどこでしょう?」 優は、どう説明すればいいか分からず、身振り手振りで訴えてみた。
「ああ、貴女は愛し子なのね。それに、、、、なんだか違う時から来ているみたいに感じるわね。」
「ええっ? それってどういう、、、、。あっ私、神殿にあった水晶のようなものに触ったんです。 そしたら急に光が出て、この近くに来ちゃったんですけど。」
「まあ、それは転移の水晶ね。では貴女は違う時代から来たということだわ。」
「違う時代、、、、この国の年号なんてまだ分からないし、、、歴代の王様の名前も知らないわ。」
「まあまあ。私はこう見えても魔女なんだよ。貴女の面倒はしばらくみてあげるから、落ち着きなさい。」
「いいんですか? すごく有り難いんですけど、、、、。」
「いやいや、ちょうど今助手をしている子が里帰りしていてね、色々と手伝って欲しいんだよ。」
「そうなんですか? では遠慮なくいさせてもらいます。」
「私も、転移の水晶を調べてみよう。貴女は愛し子だし、早く貴女の時代に帰さないとね。」
こうして優は、森の魔女に助けてもらうことにした。 2〜3日は、小屋の掃除や雑用に働いた。暇を見つけては森の中を散策し、花々を眺めた。 ある時、森の魔女がお使いを頼んできた。
「ユウや。ちょっと町まで行ってきてくれるかい? ソニア通りの中程に、ガウスの店という所が あるから、そこに行って頼んであったものを取ってきて欲しいんだよ。」
「ええ、分かりました。ソニア通りのガウスさんの店ですね。 えっと、町までどうやって行くんです?」
「ああ、小屋を出たら湖のまわりを右に進むと、道が一本あるんだよ。その道を行けば町の広場に でるからそこでお聞き。」
「分かりました。行ってきます。」
「ちょいとお待ち!! 忘れるところだったよ。ユウの髪も目の色もこの国じゃめずらしいし しっかり愛し子の印が見えてるじゃないか。それじゃゆっくり歩いてられないね。 ちょいと魔法をかけてあげよう。」
そういって森の魔女は、優の頭をそっと触った。するとみるみる髪は茶色に、目の色も濃いめの茶色に。 額の印を隠すように、髪の毛の長さもぐんと伸びた。
「よしよし。これでいいよ。行ってきなさい、気をつけてね。」
「は〜い。行ってきます。」
優はなんだか変装した気分で、うきうきと歩いた。魔女の言った通りに道が現れ、道をたどると 王宮の前の広場に行き当たった。
「あっ、王宮の前じゃない。やっぱりこの国だったんだ。でも、時代が違うって言ってたし私を知っている 人はいないってことよね。」
なんだか嬉しくなって、うきうきとしながら広場にいた優しそうなおばさんに声をかけ、ソニア通りを 教えてもらった。
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