優が通された部屋には、30歳くらいの真面目そうな男性が1人待っていた。 優を見ると、ソファから立ち上がりゆっくりと礼をとる。
「はじめまして。私はこの国の宰相をしておりますジルベール・フェンディットと申します。 失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「あ。私は、佐倉 優 と言います。あの、どうして私?」
優が必死に訴えようとするのを手で押しとどめ、ソファに座るようにすすめた。
「混乱してらっしゃるのは分かります。お名前はユウ様でよろしいですか?ユウ様が納得できるよう説明いたしますので、落ち着いてお聞き下さい。」 「はい。」 とりあえず、聞いてみようとソファに腰掛けた。それを待つと、ジルベールはゆっくり話し出した。
「この国は代々、王が変わると女神の愛し子となる者を召還いたします。今の王は、2ヶ月前に即位なさいまして、今日召還の儀式を行い、ユウ様がおいでになったというわけです。ユウ様には女神の信託を受けていただいて、次の王に変わられるまで女神の愛し子として、この国にいてくださるようお願いしたいのです。」 「えっ?ということは元の世界に戻れないということですか? それに、従兄弟の透はどうなるんですか? さっきの部屋にいた神官じゃない人が、私が女神になれば助けられると言ってましたけど、それはどういう意味 ですか?」 「ああ、その方はこの国の王である アルバート様ですね。確かに、女神の愛し子となれば助けられるかもしれません。本来召還された男は、災いになると処刑されますから。」 「え?あの人王様だったの?」 優は、先ほど冷たい言葉を発していた人物を思い浮かべた。 20代前半だろうか、銀色の長い髪を一つにくくり、緑の目は冷たく透き通っていた。かなり格好良かった事を 思い出す。しかし、そんな冷たく感じる王の側で一生を暮らすことになるかと思うと、恐ろしい気がした。 「でも、女神の愛し子になれば透を助けられるんですよね?」 「ええ、女神様にお会いになった時に叶えられると思います。」 召還されたことは不本意だが、どうも自分のせいで透が一緒に召還されてしまい、今こうしてる間にもどんな目にあわされているかと思うと、女神の愛し子となることを了承するしかないようだった。
「わかりました。透を助けたいし、この国にいます。」
優の決意を聞いたジルベールはにっこり笑い、それでは王宮までお移り下さいと優の手をとった。
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