ドラ吉は、上を見上げ。空からは、大粒の雨が降っていた。しかし、ドラ吉は上を見たまま嬉しそうに目を細めた。雨が降らなくなってから半月になる。そんなさなかの雨だったからだ。それにドラ吉にはある思いもあった。そんな時にドラ吉に惚れ込んでいるキキがやってきた。 「ドラ様、どうしました?体が濡れてしまいますよ。」 とりあえずドラ吉に会えただけでも嬉しいのだ。このキキは…。 「うん、キキか…。いいんだ雨に濡れるのは結構好きなんだ俺。」 「そうですか…。それならいいのですが。」 ドラ吉の顔に笑顔が浮かんでいるのに気がついたキキは、首をかしげて聞いてみた。 「何か嬉しいことでもありましたか?」 「いや、ただ思い出すなぁと思って…。オレがまだ幼い時に奴と出会ったことを。」 「ドラ様の昔のことですか…。ドラ様はきっと幼い時からかっこ良かったんでしょうね。」 キキはドラ吉をまぶしそうに見上げた。 「いや、そうじゃない。オレは昔人に飼われてたんだが、そいつが人間には珍しくオレの気持ちを理解して…。というか、あれはたぶん俺の言葉が理解できていたんだろう。」 「人間にそんな奴いるんですか?」 生粋の野良猫としていきていたキキには、信じられない話だった。 「それがいたんだ。そいつは、俺の鳴き声と態度で俺の言いたいことがすべて理解できていた。まぁ、それはそれとして生きやすかったんだがオレとしてはちょっとそれも退屈だったんだ。」 キキは、ますます不思議に思った。なにせ、生きるのに退屈ということはありえない。 それは、自分をすべて否定している気分になるからだ。 「…。なぜ、退屈だったんですか?」 「何も苦労もしてなかったのもあるが、なんでもしたいことが出来るのは出来ないよりも楽しくないからな。だから、俺は家を出てみたくなった。」 ドラ吉は、屋根のある公園のベンチのところに向かいながら語りだした。自分の過去の思い出を…、そして飼い主とのふれ合いを…。
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