浦島は、その日は酒にでも酔わなければ、やってられないような心境だった。 38歳独身のマジメなサラリーマン、浦島には惚れた女がいた。 女の名は真理子。ふっくらとした丸顔の笑顔の愛らしい女だった。
真理子は離婚歴のある子持ちの34歳だったが、そんな事は気にせずに浦島は自分なりに真理子も、5歳になるその子供も大切にしてきたつもりだったが、その日の昼間、会社の休憩時間を利用して真理子と昼食を共にした時、真理子の方から突然、別れ話が切り出されたのだった。
「これまで色々良くしてもらった事には感謝してるんだけど・・・」
ためらいがちに途切れ、途切れに切り出されるコトバに、浦島はすぐに別れ話である事を悟った。 「男が出来たのか?!」思わずカッ!となって真理子の顔を睨み付け吐きつけた短いコトバに少し身をすくめながら真理子はうつむき、そのままコクリと頷いた。 真理子は元々、年下男好みの女だった。 ヘソや唇にピアスを付けて髪をカラフルに染めているクラブのDJやカリスマと呼ばれるような若い美容師・・・ そんな今時感のある若い男への憧れが、いつも真理子の胸にひしめいていた。
真理子と過ごした日々の中で、なんとなくそれを感じ取ってはいた浦島だったが、誰にだって憧れはある。
憧れと現実の見分けが付かないほど彼女の自我は幼くはないと、タカを括っていた。 ところがライバルは意外なところからやってきた。 ヘビメタなんて音楽が未だにあった事も知らなかったが、ポップスが無くならないように消えてしまう音楽のジャンルなんてものは無くヘビメタもまた一部の若者の間では健在で真理子が恋仲になった男は背中一面に龍のタトゥーを彫った現在ヘビメタ界の風雲児とか呼ばれている男らしい。 「らしい」と言ったのは、真理子がそう語ったからで、浦島は、その男に直接会ったわけではないので「らしい」なのであった。
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