――プロローグ
つまんないよなぁ…。
最近の僕はこんな事ばっかり口にしている。
学生の頃は良かった。毎日が流動的で、毎日が新鮮だった。その頃の僕が今の僕を想像できるだろうか。きっとできないよな。ムカつく奴に頭下げて、プライド無いのかよって大人を蔑んでいた僕に。今の僕はそんな大人になっている。変わらない毎日、動かない毎日。ムカつく奴でもペコペコ。だからなのかな、毎日つまんないのは。
僕の名前は西森洋介。駅で10分人間観察してれば、10人は見かけるような普通の社会人。でもこんな僕にも夢がある。自分の物語を綴る人、小説家だ。会社で働いているからって夢を持ってはいけないってことはないだろう? 小説、映画、ドラマ、漫画。小さい頃から物語を体に受けて、自然と憧れるようになった。ずっと胸に秘めてきた夢。 「いつか自分だけの物語を僕も描きたい。」 でも今思えば何故かわからないけど、恥ずかしくて誰にも言えなかった。
そんな僕が、ある本を拾ったんだ。
―第1章 つづきなき物語
第1話 つづきが無い物語!
僕の名前は西森洋介。平凡普通凡才の22歳。高卒で会社に入り、今年で4年目になる。会社生活は本当にくだらない。毎日決まった時間に会社へ行き、残業してアパートに帰る。それだけ。元々高卒の僕には出世の道なんてないし。それでも上司にペコペコし続ける。
今日も会社に行き、残業して帰ろうとしていた。電車を降りるともう真っ暗。当たり前だよな…。さっさと人ごみの中を歩いて駅の南口を出る時、前を歩いていたそれはスゴイファッション(簡単には言い表せない!)をしていたおばちゃんが何かを落とした。
僕はそれを拾い上げた。
―― 古びた本だ。
すいません…。
本を落としましたよ…っと言う前に、僕の前からおばちゃんはいなくなっていた。正確には見つけられなかったのかな。あんなスゴイファッションなのに。 まあいいや。明日、落し物として駅員に届ければいいだろう。僕はカバンに本をしまいこんだ。
今日もつかれたなぁ…。そんな事をボーっと考えながら、駅を出て、アパートに帰り着いた。シャワーを浴びて、一息ついて、僕は思い出した。そういえば本を拾ったんだ。 僕は少しドキドキした。昔から小説や映画、ドラマ、漫画が大好きなんだ。
…読んでみようか。
カバンから本を取り出してみる。結構分厚い。古びて、表紙が破れている部分もある。それでもその本が高そうなのがわかる。
表紙にはタイトルを書くための部分らしき枠があるのだが何も書いていない。背表紙にも。よく見てみれば、どこにも文字が書いていない。何なんだこの本は?僕は思った。
でも何故か不思議な魅力があった。
硬い表紙をめくる。
そしてゆっくりと黄ばんだページをめくる。
……え?
「つづく」
一言目にそう書いてあった。僕はあわてて本をチェックする。それ以外何も書いていない。黄ばんだ白紙があるだけだ。
がっかりだ。何だよこれは。
僕は落胆した。急につまんなくなった僕は、会社の疲れを思い出し、ただの黄ばんだ本を机に放り出し、ベッドに転がった。
天井を見上げる。
つづく……か。
意味わかんないよ。何も物語がないじゃないか。イラつきがチラつく。 あのおばちゃんこんな本どうしようとしてたんだよ。
少し落ち着いて、僕は昔を思い出していた。僕は小さい頃から大人になったら、小説家になりたいと思っていた。でも今の僕はサラリーマン。僕の「つづき」は何処に行ったのかな。
つづく……か。
少しずつ秘めていた思いが動き出していた。
「自分の物語を描きたい」
僕はつまんない世界のベッドから起き上がり、使っていなかったペンを執った。古びた本を開け、人の物にイタズラするような罪悪感があったが、僕は書き始めた。
「はじまり」も「つづき」も無い物語なら、僕が「はじまり」を描くんだ。
これが僕のファンタジーの「はじまり」になる、書き疲れて眠っている僕には想像もできなかった。
第2話へ「つづく」。
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