慣れた手つきで渡辺はコピー機のフタを外し、紙が詰まった部分をすぐさま見つけ出した。 「さすがだね、渡辺さん」 綾乃の口から素直な感想が出る。 「……これくらいOLならできないと」 「なんかそれって、OL馬鹿にしていません?」 別にコピー取り専門じゃないのだから。 「与えられた仕事として、きちんとこなしているだけですよ」 コピー機に詳しくなくたって、仕事はできるもの。 少し頬を膨らまして、怒った表情を作る。 「ところで、ご用件は何でしょう?私を探していたみたいだけど」 「あぁ、そうだ」 思い出した、と詰まってくちゃくちゃになった用紙を綾乃に渡しながら。 「課長に頼まれていた資料、どうなってる?」 「課長に……?あ、はい。できています。今お持ちしますね」 コピー室を出ようとし、ノブに手をかけたとき。 「立花」 呼び止められて、渡辺のほうに向き直る。 「なんですか。まだなにか?」 少しげんなり。用件は1回で済ませてよ。 「今日、飯でも食いに行こうよ」 「……はっ?」 「コピー、直してやったんだから、奢れよ」 その言い放った渡辺の怒ってるような馬鹿にしているような表情が、余計に綾乃の神経を逆撫でさせる。 「えぇ、喜んで!何でも奢らさせて頂きますよ!」 売り言葉に買い言葉? 意地になってそう言ってしまったことが、悔しい。
でもあの時、この出来事が無かったら。 私は、こんな苦しまなくて良かったはずだ……。
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