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作品名:硝子のしずく 作者:桜月

第1回   はじまり
昼食後のウトウトしたくなるような午後。
「眠い……」
コピー室で大量のコピーを頼まれた綾乃は、眠気と格闘していた。
大きく欠伸。それに続いて。
「はぁ……」
深いため息。
そのとき、ふと目に入ったのは。

左手薬指の、結婚指輪。
私、結婚したんだよね。
手を宙に仰ぎ、まじまじと見る。
指輪したって、何も変わらないのに。

4ヶ月前、綾乃は大学時代から同棲していた智史と結婚した。
正直結婚したからって何も変わらない。
毎日、仕事行って、帰ったら洗濯掃除、ご飯作って。
二人で食事して他愛ない話ながら、甘い時間を過ごして。

なんてことない、日常。

結婚前から続いている二人の生活。

まだ新婚といわれるけど、本人たちは倦怠期の夫婦みたいな(笑)

ウィンウィン♪と軽快なテンポで紙を排出していたコピー機が急に止まった。
「あれ、終わり?」
まだ予定枚数終了していないのに。
「やだ、紙詰まり!」
軽くコピー機を小突いた。
「何処が詰まったのよ、私、わからないよ」
オロオロしている綾乃の前に。
「立花」
「救世主!」
姿を見せたのは、同僚の渡辺 高志。
「コピー、止まった。見てくれない?」
綾乃の本性を知っている、数少ない男だった。


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