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作品名:契りの影 作者:ショウ

最終回   契りの影 最終回
1日
「どういう事だ?」
「お前が選んだ契約だろ?」
「どういう意味だ?」
「お前はしっているはずだ!!」
「まさか!?そんな!!そんなはずは無い!」
「それが、真実だ!!」
「しかし、、、、、、、」
「お前が選んだ道だ!もう、後には戻る事は出来ない!」

陸は飛び起きた。

「まさか!!?そんな事が・・・」
「本当に現実なのか?そんな・・」
陸は呆然とした。これから起こる事に・・

「時間が無い!いそがなければ・・」
陸は弟に連絡をした。
「あ、すいません山口と言いますが、山口はいますでしょうか?」
管理人のおばちゃんが電話に出た。しばらくして、
「もしもし??」
眠そうな声で陸の弟の一樹が電話にでた
「アニキ??何?こんな朝早くから?」
「悪い!!明日、引っ越す事になったから、手伝ってよ」
「はあ??明日??なんで急に??」
「とにかくお願いね??」
「けど、明日は俺、部活は休みだけどミーティングがあるだけど?」
「明日は法事とか何とかで休みとっておいてくれ?」
「無理だよ、急にそんな事いわれても」
「とにかくよろしくな、明日は忙しくなると思うから、絶対休みとっておいてくれ」
「アニキ?変だぞなんか?大丈夫か?そんな事いつもは言わないのに」
陸は自分の異変に気が付いているが、とにかく焦っていた。
「変じゃないよ!まあ、そういう事で頼んだよ、それじゃ!!」
「アニキ?」

陸は電話を切った。

そして由美にも電話をした。
「おはよう??どうしたのこんな早く??」
「今日会社終わったら、少しだけ逢えないかな?」
「え??どうしたの??」
「話したい事があるんだ?」
「わかった。いいわよ。」
「ありがとう、いい話じゃないけど、連絡するね」
「何??」
「あとで、また今日は今からちょっと忙しいから!!」
「陸??」
陸は電話を切った。
「急がなければ、とにかく時間が無い」
身支度をして急いで家を飛び出した。
時刻は7時を示していた。

陸は電車の中で、今日のスケジュールを確かめ、今日の予定を考えた。
電話を確認すると由美からメールが入っている。
「どうしたの?陸大丈夫?」
陸はまたも全身に悪寒を感じた。
電車の中に目をやると向こうの車両には陸の方を見つめる一人の人物がいた

「もう、わかっているよ」
陸は呟くと電車を飛び降り、急いで会社に向かった。
「おはようございます。」

陸は急いで、机の中から書類を出し、整理し始めた。
まとめた、書類を机の一番上の引き出しに入れ、引き出しを閉めた。

間もなくすると、北村がやって来た
「あれ??どうしたんですか?今日は早いですね?」
「おはよう、ナオ君、今日俺、なんだか体調が悪いから早退するわ」
「え??そんな無理でしょ!!部長が怒りますよ!!」
「とにかく帰る、今日は・・・」
「山口さん大丈夫ですか?何か変ですよ?」

「すまないナオ君、もう時間が無いんだ・・」
「はい??まだ、9時前ですよ??」

陸は北村との会話を遮断し、部長のもとへと向かった。
「すみません。今日は体調が悪いので、早退させて下さい。」
「山口!!今、どんな時期かわかっているのか?ダメだ!」
「すみません。とにかく帰りますので、失礼します」
「おい!」

陸は部長に背を向けると、荷物を摑み会社を急いで出た。北村が後を追いかけてきた。
「山口さん??どうしたんですか?絶対変ですよ?」

「すまない、とにかく時間がもう無いんだ?」
「山口さん??時間が無いってどういう事ですか?」
「ナオ君、後で電話するから!!」

陸は急ぎ足で会社を後にし、自宅に向かった。

電車の中で、陸の心の影が大きくなっている。ふと目をやると
初老の男が向こうから陸をジッと見つめていた。
「もう、わかっている・・・」
陸は頷きながら、初老の男を見つめた。

自宅に帰りつくと、陸は急いで棚の中から、書類を取り出し、まとめ始めた。

陸は北村に電話をした。
「山口さん??部長カンカンですよ?どうしたんですか?」
「いいんだ、もう、ナオ君頼みがあるんだけど、聞いてくれるかな?」
「え??なんがか怖いな??もちろん、いいですよ」
「机の一番上の引き出しに、鍵を掛け忘れたみたいなんだ、確かめてくれない?」
「ああ、確かにあいてますよ」
「書類の束があると思うんだけど?あるか見てくれる?」
「はい、わかりました。ありますよ」
「それを大事に持っておいてくれないかな?」
「はあ、わかりました。」
「よろしくね、何かあったら・・・・・」
陸は言葉を止めた、書類は北村に渡す為にわざと机の引き出しの鍵を掛けずに入れておいたものだが、
陸の心は大きな影が存在し、その行動を説明する事が出来なかった

「山口さん??」
「本当に大丈夫ですか?今日、会社終わったら行きますね?」
「悪い、今日は無理だから、よかったら明日空けておいてくれる??」
「本当に大丈夫ですか??」
「ああ、すまない体調が優れないから、よく判らないんだ。とにかくその書類は大事にしてくれ。頼むな、今までのお客さまのデーターと取引先関係とか、営業の方法とか秘密事項もかなり多いから、人には見せないように頼むな、ナオ君にしか頼めないから・・」

「わかりました。山口さんの頼みごとならお任せ下さい・」
「けど、ナオ君は見てもいいよ」
「見ないですよ!!」
「見てもいいよ・・」
陸は言葉を止めた。
「とにかく大事に持っててくれ」

書類の中には北村への感謝の気持ちや今後の事、そしてこれから起こると思われる事を予め書いていた。北村に全てを任せて・・・

そして、弟の一樹宛に手紙を書き始めた。
今後の事、これからする事を判るように書き、読み終わったら処分をする事を書き残した。

そして最後に
一樹は決して契りの約束を交わすな
と最後に書き、文章を終えた。

まとめた書類を、机の上に置き全てを整え、時計に目をやった。
時計は既に午後4時を閉めている。

「まずい、時間までもがおかしくなっている。急がなければ・・」

陸は急いで家を出ると、由美の仕事先へと向かった。時刻は5時30分を示している。
待ち合わせ場所に着くと、陸は深く深呼吸をした。心の影が大きく、大きくなる、陸は締め付けられる思いに駆られながら、心の中から聞こえる声に耳を傾けた。

「お前は知っている!!」
「ああ、わかっている!」
「お前は知っている!!」
「ああ・・・・」

陸は深い谷間に中にいる感覚に囚われていた。もう決して抜け出す事の出来ない深い、深い谷の底でもがいている自分をみつめているような感覚から抜け出せなくなっていた。

「陸??」

陸は現実の世界に引き戻された。顔を上げると底には由美がいた。いつも由美には感謝をしている。陸には闇の一面がある。両親をなくしてからずっと抱えている深い闇が・・
由美はそこからいつも、救い出してくれていた。由美を陸は世界で間違い無く一番愛していた。由美には全てを捧げてもいいと感じていた。
「陸??大丈夫??今日も何か変よ??」

「由美、話がある!!」

陸は張り裂けそうな思いになりながら、言葉を捜しながら由美を見つめた

「何??」

由美はこちらをじっと見つめて、陸の目をじっと覗きこんでいた。
陸は逃げ出したい気持ちいっぱいになったが、どうしようもない感情を押し殺して必死に違う人物を演じながら、言葉を吐き出した。

「俺、実は好きな人が出来たんだ!!だから、お前を幸せにはもう出来ない!!」
「だから、別れよう・・・」

由美は陸の顔を見つめながら、何が何やらわからない顔をしていた
「冗談でしょ??ねえ、陸??」

「すまない、俺はもうお前の事が好きじゃないんだ?」

「冗談でしょ??冗談って言ってよ?」
「すまない・・」

「ひどい・・・・」
由美は涙を流しながら、陸をにらみつけ、その場から立ち去って行った。陸は最後に由美を抱きしめたかったが、必死にそれを抑えていた。

由美が小さくなっていくと、陸は押し殺していた感情が溢れ出した。

「これで、よかったんだ。これで・・」
陸は数十分その場に立ち尽くしながら、感情をコントロールしながら、
陸は自分に言い聞かせながら、由美の親友の奈々に電話をした。

「陸君!!どういう事??由美から聞いたわよ!!どうして!」
「奈々ちゃん。すまない。そういう事なんだ、とにかく、お願いを聞いてくれないかな?」
「ひどいくない。絶対ひどいって。最低よ!」
「わかっている。俺は最低なんだ。頼みがある、今日は由美と一緒にいてやって下さい。お願いします。最後のお願いになると思うから」
「あんたに言われなくてもいるわよ!最低!!」
「すまない、ありがとう。とにかく由美の事頼んだ・・そして・・・」
陸は言葉を止め、電話を切った。
「やめておこう、今更伝えてもしょうがない。俺が選んだ事だ」

陸は北村に電話をした
「やあ、ナオ君?会社終わった?」
「山口さん?大丈夫ですか?部長今日機嫌が超悪かったですよ。明日知りませんよ」
「いいんだ、それより、俺由美と別れたから!!」

「はあ???????なんで????」
「とにかく・・・・・・・・・」

陸は言葉に詰まった、泣き叫びたい気持ちで一杯になってしまった。何とかそれを抑える事で必死になっていた。
「山口さん??絶対おかしいですって?今から行きますから!どこにいるのですか?」
「すまない・・すまない・・ナオ君ありがとう・・・」
「山口さん??山口さん??」

陸は感情を何とか抑えようとするが、心がおさまらない。陸は必死で自分を押し殺し、北村に言葉を投げた

「大丈夫だから、とにかく今日は一人でいたいんだ。ナオ君、もし由美に会う事あったら伝えてくれ、やっぱり愛しているって・・・」
「山口さん?自分で言えばいいじゃないですか?おかしいですよ?とにかくすぐ行きますから?どこですか?」
「いいんだ、すまない、大丈夫だから、今日は一人にさせてくれ」
「山口さ・・」

陸は北村との連絡を絶った。陸は携帯の電源を切り、フラフラとあても無く歩きはじめた。
心の中の影が大きく、大きく、陸を支配し始めている。

陸は公園のベンチに腰を下ろし、ボロボロの感情を一つ一つ整理し始めた。
「これでよかったんだ・・これで・・・」
「ああ、もう時間も狂いだした・・」
「俺は判っている・・」
「俺が選んだんだ・・」


陸が公園のベンチに腰掛けていると、向こうの方から初老の人物が近づいて来た。

「ああ、あんたか!惨めなもんだろ?これでよかったのさ!」

初老の男は上から陸を眺めながら、不気味な声で

「お前の望みをかなえてやる」
と言い残すとその場から立ち去っていった。

しばらくすると遠くから由美が走り寄って来ているのが見えた。

「陸、いかないで!!お願い!!陸と別れるなんて出来ない」
陸は腰をあげ由美に近づき由美をたぐり寄せ、抱きしめた。
「陸、お願い、私を一人にしないで、お願い・」
由美は泣きながら、陸を強く強く抱き締めている。
「すまない、由美、俺はお前を心から愛している」
陸は溢れ出す涙で由美の顔が見えなくなっていた。陸はただ、ただ、由美を抱きした。
「すまない、由美、すまない、俺はお前の為なら何でも出来る。おまえを世界で一番愛している。」

「なんで?別れないといけないの?」

「俺はお前を愛している。だからだ、お前の為に・・・・・」

陸は言葉を失った。由美に伝えては決していけない事なんだ。由美には・・・

「私なんでもするから、だから・・・」

「由美、すまない。俺はお前の為ならなんでも出来る。だから、俺は選んだんだ。お前の為に・・・」

「どういう事?」

「契りの約束を交わしたんだ、だから交換するんだ」

「どういう事?」

「俺はお前の為に、灰になる事を選んだ。そう、由美の代わりに・・」
「え??」
「とにかく、もう時間が無いんだ、もう時間が・・」
「どういう事?」
「許してくれないか?こんな俺を、俺はお前のそばにずっといる。お前の幸せを願っている。ただ、一緒にもういる事は出来ないんだ。あとは灰となり暗闇へと行くんだ。」
「俺が選んだんだ、俺が・・・」

陸は由美を強く抱き締め、深く深く抱き締めた。
「嫌!!そんなのどういう事?私の為?陸は私の身代わり?」
由美は意味が理解できない顔をし、陸に問いかけていた。
「違う、俺が選んだんだ、ただ、それだけだ・・」
陸は押し殺していた感情をむき出しにし、由美に伝えた

「信じてくれ、俺はお前を心から愛している。お前が世界で一番大事だ、何があっても守りたかった。ただ、今回はこれしか道がなかった・・・」
「俺はお前が好きだ!!」
「それだけだ。だから、幸せになってくれ、一緒にいれない俺をどうか許してほしい。」
「俺は、ただお前の幸せを願う」
「陸!!嫌!私も陸を愛してるから、近くにいて」
「すまない、もう時間が無いんだ、行かなくては・・」

陸は辺りを見回した。目の前には初老の人物が立っている。
「ああ、夢か?それでいい・・・それで」

陸は契りの影と契りの契約を交わした。自分の命と引き換えに由美の命を交換したのだ。そして、最後の望みとして、由美にその事実を夢の中だけで伝える事を願ったのだった。由美に決してその事実が伝わないようように、ひっそりと由美の為に灰になる事を選んだのだった。

初老の人物は呟いた
「お前が選んだ道だ、さあ時間だ・・・」
「由美・・・愛している・・・本当に・・・」
陸は恐怖を感じながらゆっくり深く、大きく頷き、目を閉じた。
「ああ、わかっている。俺は知っている・・・」

契りの影が陸を飲み込み、陸の全てを深い闇が包んでいく。
「ああ、俺は知っている・・・・」


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