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作品名:天使と堕天使の関係 作者:夢与人

第2回   二人目の副官とファミエルの関係
今日は、民間より騎士を応募していたので、その試験がある日だ。ファミエルは副官のジュウと一緒に闘技場に来ていた。一番高い位置にある貴賓席に座っている。
 少しの間、無言で待っていると参加した者たちが闘技場に入ってきた。大きなオノを持つもの。弓矢を持つもの。短剣を持つもの。みな、各々の武器を持参している。
「ジュウ、もう一人副官がいるんだが、ドイツがいいと思う?」
 ファミエルの軽い声にジュウの野太い声がこたえる。
「まあ、武芸に覚えがあり、戦略に秀でていれば良いと思うぞ。それに、落ち着きが加われば最高だがな」
 ファミエルは軽くうなずいた。それと同時にこの男への信頼感を強くした。
(俺の思ってたことを言い当てるとはなぁ。思考回路が一緒なのかもな)
 かなり冗談が混じっているように思えるが大マジなのが、この二人のバカなところか。この場合はファミエルのみが該当するのではあるが・・・・・・
 そんな話をしていながらも、ファミエルはきちんと参加者を見ていた。そして、見つけたのだ。この場にいるはずの無い人物を。
「・・・・・・・な・なんであいつが、ここに?」
喋るやいなや走り出す。その後ろにジュウが追いかけてきている。
 闘技場の真ん中に二人は飛び込んだ。一瞬、ファミエルはキョロキョロしていたが、すぐにお目当ての人物を見つけて、駆け寄る。
「おい、ロニエル。何でお前がここにいるんだよ」
 ファミエルが話しかけた人物は、ファミエルと同じ金髪。しかし、ファミエルは肩ぐらいまでしか髪はないが、その人物ロニエルは腰まである。超ロングストレートだ。顔立ちだけなら、女にも見えるが、体つきを見れば男だと分かる。えらく場違いな感じだ。
「ファミエル!ここにいたのか。王軍にいると聞いたから来てみれば・・・・・なんだ、お前が将軍か」
 なにか、がっかりのような響きを含む言い方だ。ファミエルでもちょっと頭にきたが、そこは何も言わなかった。
「どうだ?計画は。進んでるのか」
 後ろについていたジュウは何のことだか分からなかったが、ファミエルにはそれで十分伝わったらしい。
「まあ、遅れながらも、ボチボチだな」
 と、答える。目線でのやり取りを軽くする。
「えぇっと、ファミエル、この者はだれだ?」
 ジュウが状況を理解できず、話に割り込んでくる。
「まあ、あれだ。昔の知り合い。ってか、まあ、友人ってか、腐れ縁だ。な?」
 軽い口調で、ロニエルに返事を求める。ロニエルも軽くうなずいた。
「じゃあ、コイツでいいや。副長。ジュウ、お前もいいだろ?」
 簡単に決めてしまう辺りはアホ丸出しだ。しかし、それでも成功するのがファミエルではある。そこは、天賦の才というところだろう。
「おう。ファミエルがいいのならかまわん。じゃあ、後のやつらは全員、タダの騎士として雇うのだな?」
 「ああ。そうしよう。手続きを済ませてくれ。俺はコイツと私室で少し、話すことがある。後は頼んだぞ」
 ファミエルはそう言うと、ロニエルをつれて私室に戻った。
 私室に入るとロニエルに酒を入れてやる。
「で?お前が来たってことは四大天使さまは許してくれたのか?」
 きちんと、まわりにだれもいないかを確認して、窓際にたって、ファミエルが話しかける。
「いや。お前みたいに抜け出してきた。つまらない生活よりもこっちのほうが俺は向いてるみたいだ」
 軽い口調で二人は話している。それをドアの外でカジュサールが聞いていた。
(四大天使?何のことだ?天使とは・・・・・・)
「まあ、んで、俺には作戦がある。それには絶対に必要な人物がいる訳だ。例えば、俺らのことを秘密にしてくれる有力者。ドアの外にいるやつとかな」
 そういうと、一瞬のうちにドアに駆け込み開ける。狭い部屋ではないのだが、はやすぎて、、カジュサールは逃げる暇が無かった。そのまま、中に入れられる。
 そのまま、ファミエルはドアを閉めた。
 つかの間の静寂。絶えられなくなったカジュサールが声を発する。
「なんのことだ!今の話は」
 ロニエルは相当驚いている。ファミエルはそうでもないが。
 たぶん、気づいていたのだろう。
「まあ、お前にはどっちみち話さなきゃいけなかったしな。まあ、お前も座れ」
 ファミエルの指示通り、カジュサールはロニエルの横に座った。
 ロニエルは、「話していいのか」という目でファミエルを見ている。ファミエルは気づいているようだが、気にせずに話をし始めた。
「まあ、簡単に言うと俺たちは天使だ」
 なにか言いたげにカジュサールが口を開けたが、「話が終わってから質問しろ」と、ファミエルに言われて、口を閉じた。
「まあ、んで。最近の事件だが・・・・・たぶん。てか、ほぼ堕天使の仕業だ。堕天使って言うのは、神に逆らう天使のことだと思えば良い。そんなとこだし。で、まあ、俺たちはそれを倒しに来た天使ってことだ。
 まあ、簡単には信じられないかもな。でも、事実だ。んで、お前を俺たち・・・てか、俺はお前を信頼してるから話した。それに、お前を利用もしたい。
 なに。お前に迷惑はそんなに掛けない。
 お前の城に二〜三日、ロニエルを置いてくれ。それだけだ・・・・・・んで?質問があれば承るが?」
 突然の話だ。カジュサールの顔にはいかにも驚いています。てのが、よく分かる。しかし、今のは事実である。それは変わりようが無いのである。
「なんというか・・・・・・・豪快な説明だな・・・・・しかし、信じられない話すぎて信じてしまいそうだ」
 苦笑いを浮かべる辺り、他の人間とは違う傑物なのだと分かる。カジュサールも人間にしてはすばらしい能力を持っているのは間違いない。
 しかし、それ以上にすばらしいのはこの対応能力なのかもしれない。ふと、そんなことをファミエルは思った。こっちに戻ってまだ間もないが、それでもコイツが秀でているのは間違えようの無い事実である。まあ、人間にも天使にも、向き不向きは存在するのは当然で、カジュサールの場合はこの分野において秀でているだけなのかも知れないが・・・・
「はは。まあ、急ぎ足で説明したしな。それでも、物分りの早いお前で助かった。こちとら、すぐにでも出発したいんだ。すぐに文を書いてくれ」
 急いでいる割には軽い口調で説明した。
 すると、カジュサールは机の上にあった筆と紙を自分の物のように使い、文を書く。数秒でその作業が終わった。
「ほら。それを持っていけばどうにかなる。城は好きに使ってもらってかまわない」
 おいおい、とファミエルは思った。俺はロニエルを泊めてくれ言っただけなのだが・・・・まあ、いいか。と内心で思った。
「ああ。ありがとう。我が友にして最高の戦友カジュサール。いい結果を持って帰ってくるさ」
 こうして、騎士の応募よりたったの二日という、異例の速さで王都ミレニアルトルスレアンを出発した。めざすはカジュサールの居城、ニシリアール。南南東の方角だ。


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