「それでは遠慮なく、喉を噛み切りますにゃん。』化け物はよだれを垂らしていた。 「金の御面、金の御面!」 ビニール袋の中のハッシーの御面を取ろうとしたが、若者の身体は、尻餅をついたままの姿勢で、まったく動かなかった。 化け物は、若者の喉に塩を振りかけた。「ここからいただきますにゃん。」 「やめろ〜〜!」 よだれが、若者の喉に落ちた。 「ギャ〜〜〜!」 突然、猫の化け物は唸り声をあげた。そして、上空に飛ばされた。 血だらけの侍の亡霊の槍が、化け物の胸を突き刺したのだった。侍の亡霊は駆け寄ってきた。 「だいじょうぶでござるか!?」 「あ〜〜、びっくりした。もう駄目かと思った〜!」 「魔物でござる。」 「ありがとうございます!」 「魔物は、殺しても一刻(いっとき)で生き返りまする。お気をつけあれ。」 侍の亡霊は立ち去ろうとした。 「あっ、ちょっと待ってください。」 侍の亡霊は振り向いた。 「なんでござるかな?」 「お名前は。」 「高坂甚内(こうさかじんない)ともうす。」 「高坂…、わたしの名も高坂です。高坂一平といいます。」 「ほお、それは奇遇じゃのう。ひょっとしたら親戚かもしれしれんのう。おぬし産まれはどこかな。」 「東京です。」 「とうきょう…、聞いたことないなあ。はたしてどこかな。」 「あっ、そうか。ええっとぉ…、江戸です。」 「江戸か。賑やかなとこらしいのう。わしは甲州じゃあ。」 「あっ、そうだ。飲んでください。」若者は缶ジュースを差し出した。 「いいのかな。」 「ええ。お礼に、もっといいものを差し上げたいのですが…」 「そんなもの、何もいらんよ。これでじゅうぶん。」 「これを引っ張ると開きます。」 「これでござるな。わかりもうした。」 「これからどこに行くんですか。」 「風魔小太郎を捜しに行くところじゃ。」 「ふうまこたろう…」 「悪名高い風魔党の風魔小太郎じゃ。風を操(あやつ)る忍者の頭領じゃ。有名だから知っておろう。」 「その忍者、風を操(あやつ)るんですか。」 「ああ、風や火を操(あやつ)る、妖怪のような恐ろしい忍者じゃ。」
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