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作品名:人間村 作者:六角オセロ

第9回   9
みんなはパソコンを見入っていた。
「あれっ?どうしたの皆さん?」
ポンポコリンが傍にやってきて、今までの経緯(いきさつ)を話した。
「え〜〜っ!?」
一様に驚いていた。
「隼人さんは、大丈夫だったの?」
「何が?」
「何事も無かったの?」
「小次郎に二度も遭遇して、疲れちゃったよ。」
「そうなの〜!?で、どうしたの?」
「ちょいちょいと、やっつけたよ。」
「え〜〜〜っ、凄いなあ〜。どうやってやっつけたの?ひょっとして風魔の忍術?」
「そんなの使わないよ。」
「じゃあ、どうやってやっつけたの?」
「磁石とスプレー缶で。」
「磁石とスプレー缶で?」
「どうってことなかったよ、ムサシはアホだから。」
「ふ〜〜〜ん、さすが忍者だわ!」
龍次は、女の方に顔を向けていた。
「彼は、高野山のどこにいるって、言ってたんですか?」
「人間村って言ってました。」
「そうなんですか…、それはきっと嘘ですね。」
「じゃあ、どこに?」
「きっと、言えない秘密の場所だったんでしょう。」
「秘密の場所?」
「彼らは、非合法集団ですから。」
子供が起きた。
「母ちゃん、どうしたの〜?」
母親は、ソファーに戻り座った。
「何でもないのよ。」
「父ちゃん、まだなの?」
母は子供の顔を見て、悲しく答えた。
「まだよ。」
「遅いねえ。」
「今日は帰って来ないって、帰りましょう!」
「え〜〜〜っ、帰るの〜〜!」
「仕方がないわ。」
「明日は帰ってくんでしょう?」
「明日も帰って来ないのよ。帰りましょう!」
「いやだよ〜〜〜!」
母は、子供の手を取って出て行こうとした。子供は泣き出した。
「いやだよ〜〜〜!」
「帰るのよ!」
「どこに帰るの〜〜!?」
龍次が、やって来た。
「帰られるんですか?」
「はい。」
「帰る場所はあるんですか?お金はあるんですか?」
「…はい。」
龍次は、女の目を見ていた。
「あなたの目は、嘘を言ってる。」
「大丈夫です。」
「ほんとうは、帰る場所も、お金も無いんじゃないんですか?」
女は泣き出した。
「はい。」
「だったら、ここに居てもいいんですよ。」
「えっ!?」
「ここに居てください。」
「えっ、見ず知らずの私たち親子のために、どうして?」
「わたしたちは、皆兄弟ですよ。一緒に頑張りましょう!」
女は、大きな声で泣き出した。
「実は、もし彼がいなかったら、この子と一緒に死のうと思ってたんです。」
子供も大きな声で泣き出した。
「母ちゃん、死ぬのはいやだよ〜〜〜〜〜!」
龍次は、大きな声で怒った。
「ばかやろう〜!」
みんなは。びっくりして、龍次の顔を見た。龍次は、涙ぐんでいた。必死に涙を堪えていた。
「死んだらいけません!この子のためにも強く生きてください!」
そして、優しく女の肩を叩いた。
「一緒に頑張りましょう!」
みんなもやってきた。そして、合唱するように龍次の言葉を復唱した。
「一緒に頑張りましょう!」
女は泣いていた。子供も泣いていた。ヨコタンが、泣いている子供を抱きかかえた。
「正男くん、大丈夫よ。帰らなくってもいいのよ。」
「帰らなくても、いいの?」
「うん、いいのよ。」
「ここにいても、いいの?」
「ここにいてもいいのよ。一緒に暮らしましょう!」
「父ちゃんにも逢える?」
「逢えるわよ。」
みんなの愛が、弘法大師の慈悲の光のように、深く優しく親子を包んでいた。



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