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作品名:20歳のスタート 作者:☆mari☆

第5回   心のより所・・

ヘアメイクが終わっても、あたしは待機している女の子が集まる場所へは向かわない。

仕事前にするべきことがあるのだ。

ヘアメイク室をでて、厨房へと向かうあたし。
水をもらいに行く。


あたしは薬を飲まなければならなかった。



「修ちゃん、お水もらっていい?」
「ん?あぁ。いいよ。・・・また薬?」
「そうだよ。」


厨房でタバコをふかしている修ちゃんが横目であたしを見ていた。気にせずあたしはコップに水を汲み、薬を飲む。これが仕事前のあたしのするべきとこ、だ。


「ミサさぁ。体大丈夫なの?今日も顔色悪いけど。しかもその薬の量・・・多いし。」


修ちゃんが心配そうにあたしを見た。
「んー寝不足なんですよ。でも大丈夫。頑張るから。」


言えるわけがない。



・・本当は大丈夫なんかじゃないよ。
毎日辛いんだよ。
本当は・・今すぐにでも壊れそうなんだよ。



そんなこと、言えるわけがない。


「そっか。あんまり無理はしないでいいからね。」
そう言って修ちゃんは厨房を出て行った。
「・・・うん。」

小さく答えたあたしの声は、彼に聞こえただろうか。
あたしは薬をさらに飲み続けた。


あたしが飲んだ精神安定剤と類されるその薬たちは、半年ほど前から通院している精神科で処方されているものだ。

薬は、半年前から比べると今は倍の処方量を飲んでいる。

悪化している証拠だった。


分かっていた。
限界が近いとこを。無理だと言うとこを。


でも、薬がないと体が動かない。


あたしは動かさなければならなかった。体を。頭を。
何としてでも。


だから依存性の高い薬だと知りながら、乱用する危険があると知りながら、飲み続けていた。

もう完璧に歯車が狂っていた。






待機のソファに向かうと六人のキャストの子が座っていた。あたしも一番端の椅子に腰掛けた。



やっぱり眠い・・・帰りたーい!体もダルイし。
あーぁ。来るんじゃなかったぁ。


ぼーっとしてるあたしに話しかけてくれたのは華奈。
「ねぇミサ、今日終わったら飲みに行かない?」


「無理無理。眠いもん〜。」
即答しちゃった。だって今日はさすがに無理だし。


「アクア行きたくない?ねー行こうよっ」

・・・アクア!


「行きたい!」
「じゃ決定〜」

やばい。行くことになっちゃった。
あー。あたしって何でこう優柔不断なの?

アクアって言うのはあたしと華奈の行きつけのホストクラブだ。あたしも華奈も指名しているホスト君がいて、最近ちょくちょく通っていた。
あたしの誕生日パーティーもアクアで華奈がやってくれるらしい。


「あー仕事が終わったら翔に会える〜。幸せ〜。」

「ちょっと華奈、まだ仕事始まったばっかりだよ?あと九時間くらいあるんだからまだまだじゃん。」

「えーだってぇ。嬉しいんだもん。」


華奈は完璧にホストの翔にはまっていた。華奈は一人でもアクアに通っているし、翔を指名してもう一年近くになるらしい。

あたしはまだ、一ヶ月程度しか通ってない。最初に行った時もこうして華奈に誘われて行った。その時あたしはホストクラブに行くのが初めてだった。
そこで出会った新人ホストの優を、私は指名している。

優・・・。あたしも早く会いたいな。



華奈の手前ではなかなか言えなかったが、あたしもホストクラブと言うものにハマりつつあった。


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