Warning: Unknown: Unable to allocate memory for pool. in Unknown on line 0 Warning: session_start(): Cannot send session cache limiter - headers already sent in /var/www/htmlreviews/author/10145/10141/1.htm on line 5 わら人形
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作品名:わら人形 作者:かすか

最終回   1
 降り止まない雨足。静かに、地を滲ませ拡がっていく。
意識を取り戻したとき、ぼくはぼくの一部だったものを見た。
血液のみならず何かが散らばっているのだが暗くて見えないし、見えたとしても自分にはそれが何かはわからない。
 ゆっくりとぼくは見上げる。見上げて見たものは自分を見下ろしていた。どうしていいかわからない、混乱していると言えばそうかもしれないが放心状態という言葉が一番しっくりくるように思えた。
 ぼくは校舎の屋上から飛び降りた。
 人を殺すために。
 彼女のために。それは違うかもしれない。結果的にそういう解釈もできるが、彼女に必要とされたい自分の欲求を満たしたかっただけだと思う。
「ユウ・・・」
ぼくの名を呼ぶ声。夜の静寂ではその微かな声も届いたかもしれないが雨の音にかき消される。それが今の精一杯。人が飛び降りる、結果普通なら死んでしまう場面を見ればまともな思考が働く一般人は普通ではない。つまり、ぼくは普通じゃないが、あの子は普通の女の子だ。
死ぬのはぼくじゃない。
死ぬのは彼女をいじめた女だ。
ぼくは、自分を傷つけることで恨む対象を傷つけることができる。もしぼくに恨む人間がいて、恨みをこめて自分の頚動脈を切れば恨んだ対象の頚動脈も切断される。自分自身も激痛を味わうがぼくがそれで死ぬことはない。だが恨んだ対象は致命傷に至れば死ぬ。
 ぼくは、今度はゆっくりと体を起こす。激しい痛みを味わったので少しふらふらするが何とか立つことができた。
「ミクちゃん、確実に死ぬと思うよ。すごく痛かった。意識もとんだし、こういうときは大概死ぬから。明日から学校には来れないね。」
ぼくの意識は自分の心臓の音に集中していた。そのときが来るのをひたすらに待った。
「ごめんね…春奈」
止まない雨、ぼくを突き落としたミクが校舎屋上から落下する。
身体が砕ける音。命が物体に変わった音。いや、違う。
ぼくが死んだときにミクは致命傷を負った。
ミクは春奈をいじめていた。ぼくは傍観者でいることに耐え切れなかった。
弱いものは強いものにとって糧でしかない。力がある自分がなんとかしたかった。ミクの子分的存在を殺さない程度に毎日追い詰めた。その日春奈をいじめたものに対しては、はっきり分かりやすい形で。ミクにだけは何もしなかった。結局、いじめという行為に賛同してくれる仲間がいないと自分一人では何もできないパターンだと考えたからだ。ミクは仲間の傷にあまり同情することなく、むしろ裏切られたという気持ちで日々ストレスを溜めていたように思えた。いじめの形自体が『ミクが友達の輪を拡げて自分側に取り込み春奈の陰口をみんなで共有する』というものではたからいじめかどうかはわからない状況だった。ミクにとって武器だった友達の輪が崩れたことでいじめの形がストレートになったことでぼくはもうやるしかないと思った。
ミクに告白するという体で屋上に呼ぶ。
明らかにぼくを見下している、だるいという感じだった。用事ならさっさと終わらせろと。
ぼくはミクの床を指差し、予め書いておいた言葉を読ませる。
コロス ハルナ。
ミクの顔が怒りに満ちた。
ぼくは自分の舌を思い切り噛んだ。
ミクは突然蹲って言葉にならない声をあげ痛がり始めた。(←はたから見れば)
「ぼくならミクちゃんを助けられる。ぼくがミクちゃんを守る。」
ぼくの舌からは血が出ていたからして、かなりミクに衝撃を与えたはずだった。
恨む人間のことを考えながらぼくを殺すと、恨んだ対象が死ぬとはったりをかました。
悩みはしていたがなんとか丸め込むことができ現在に至る。
こうして、春奈のためにミクを最悪のケースに陥れた
ぼくという人間を屋上から突き落とし、その後自殺。
人生で2回の過ちをミクは犯した。
一般的には他殺と自殺の2回。
ぼく個人の見解としてはいじめと自殺。
「これで終わりだね」
無常な独り言。のはずだった。
「ユウ、あなたと同じ人間があなた一人だと思った?」
天空からの声。屋上に春奈がいる。
「全部処理してくれて有り難う。でもね、正直自分みたいな人間は自分だけだと私も思ってた。だからびっくりしたよ。でもお別れだね。」
春奈はにっこりと笑って自分の心臓に包丁を突き刺した。
絶命するまで何度も何度も。


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